ろう。私は一般教育課目の受取り方に用意の欠けるところがあったと云う気がしてならない。その点大学教育の教育方法論的欠陥を反省すべきではなかろうか。
 人格の形成第一期を迎える青年は哲学的態度を身につけ、自己の人格を他の人格に対し独立の個性として提示する能力をもとうという意欲をもっている。それを自己表現力と云ってもよい。多くの日本人は社会に出てからどうやら獲得するものらしいが、大学教育はむしろそれを学問的体系的に獲得させようとするものだと考える。学生諸君は充分に余裕のある時間を与えられている。各人は自分の聴講する講義以外に類似の内容の書物に多数接して、自己の欲する方法と表現とをもった書物にめぐり合うことに努力を惜しまないようおすすめしたい。予習と復習の時間が指定されているが、この時間を図書館に過ごし、この館報で紹介されたものを片っぱしから読破することをおすすめしたい。
 大学教育は完成教育であると云っても人格は自ら陶冶すべきものであり、大学では学問の探究を通じて、自らを完成させる以外にはないのであるから、自分に適したその具体的方法を早く発見することが肝要であろう。学問探究の興味にとりつかれた人は、他のことを忘れてそれと取組み、車中であろうが、
食事中であろうが、それに関心をもち、分析と比較と綜合とを自然のうちに実行する、かくすることによ
って道はおのずから開けるものと思われる。大学の四年間「自分に合った考え方、表現の仕方は何か」
ということをたえず求める四年間でありたいものだ。知識はあるが知恵がないのが現代人だと云われて
いる。ふりそそぐ情報の洪水に押し流されぬ力を獲得せられるよう祈って止まない。(法学部教授)




経済学入門書紹介
    −いかにして経済学を学ぶか一

             施   昭 雄

 私はこのたび図書館から初めて経済学を学ぶ新入生諸君のために幾冊かの経済学入門書をピック・アップし、それらの内容を紹介してくれないかと急に依頼を受けた。しかし、経済学の教科書は非常に多く、特に、近頃は講座ものや、シリーズものがあふれているといってもさしつかえない状態にあって、そのなかから何冊かを選んで紹介することは、私にとって非常に難しく、当惑するばかりである。というのは、経済学に関する教科書の数が多いばかりでなく、その上、それぞれに特色や長所をもっているからである。したがって、私はここでは入門書の紹介をするよりも、いかにして経済学を理解すればよいのか、という問題にかえて考えてみたい。
 近年、現代経済学の発展はまことにめざましいものがある。特に、経済学のなかでもちいられて
  いる分析方法は、日を追って精密化され、かつ計量化されつつある。いくら経済学の分析手法が高度になったとはいえ、経済学が取りあつかう研究対象、あるいは研究課題は、従来と同様、依然として変わっていない。変わっているのは、経済学の研究対象である経済現象のなかに存在するいろんな法則をより明確にとらえようとして、従来よりもずっと精緻的かつ計量的な分析手法を取り入れるようになってきたことである。
  それでは、私達が生活しているこの社会に存在するいろんな経済法則とはいったい何であるか。これらを理解するには、もちろん私達の社会にある経済の流れ(循環)によって形成している多くの経済現象をまず把握し、次に、それぞれ密接に結びついている経済現象間に存在する一つ一つの法則の認識につとめることによって見い出し得る。
  ところで経済の流れはどのようにして行なわれているのか。私達の社会には、家計・企業と政府という三つの経済主体(個別経済)がある。まずは家計と企業の二つの経済主体の関係をみよう。家計は資本・土地および労働力の所有者であると


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