スナック・バーに寄ってジョッキを片手にそれから談論に時を過す組もある。恋人同志の学生が閉館迄は図書館で勉強して、手をつなぎながら月夜のキャンパスを帰って行く姿は微笑ましく、ちょっとした絵になる風景であった。アメリカの文化や文明に 対する批判は、最近世界的にもきびしいものがあるが、アメリカの大学の図書館の運営や学生の勉強ぶりを見てみると、正直なところ、われわれは現状でいいのかなと思わざるをえない。
                 (商学部教授)
カリフォルニアの図書館訪問記
石  井  康  一
 イギリス文学専攻の筆者が同じ英語圏とはいえ
アメリカを訪れたい理由の大きな一つは、イギリ
ス文学の資料といえども、これを豊富に収蔵する
アメリカの図書館を覗くことにあった。昨年の夏
ロサンゼルスの衛星都市ガーデナに旅装を解い
た筆者が先ず8月4日に目ざしたのは、ロサンゼル
ス北東郊の月着陸のバイキング号との交信で有
名なパサデナに接するサン・マリーノ・ラーンチに
あるハンティントン図書館である。この図書館は
太平洋電気鉄道会社の大立者であるヘンリィ・E
・ハンティントン氏の広大なラーンチ(スパニシ
ュ・イングリシュでいう牧場・農場の意)ならび
に私財を投じて設けられたもので、これと相接し
て十九世紀英国美術を主としたアート・ギャラリ
ィ(美術館)、シェイクスピア劇にあらわれる植
物を主とした植物園、日本建築の住家まである日
本庭園などがある。これらはいずれも以前はハン
ティントン氏の「ラーンチ」(前述)といわれる
広大な屋敷内にあるのである。図書館と接して歴
史・美術館などがある点では英国の「ブリティシ
ュ・ミュージアム」(大英博物館)を模したもの
であろうか。
 ここでは各々が独立しているので一括して「ミ
ュージアム」とは呼ばれないで各独立した呼称に
なっている。
 ここはロス市の観光コースに入っているよう
で、ロス・タイムズ紙によれば一昨年の入場者
(ただし入場無料)は60万を越えている。しかし
単なる名所でないことは、仕切られた部屋が与え
られ、ここの図書類を自由に利用して研究に従事
する世界各地からの研究者たち(「リーダー」と
いう名称で呼ばれている)が常時約1,300名もい
ることからもうかがえることである。
 それというのも、ここには、500万に及ぶ手稿
本、写本類、30万という稀覯本、20万の参考書目
が文字通り自由に利用できるからである。これを
先輩格の英京ロンドンの「大英博物館」と比べる
ならば、後者の街中で堅苦しく形式ばっているの
に対し、前者は郊外の田園の中のまことに親しみ
ある環境であることである。このような自由濶達
な雰囲気は当然のこととして実り多き成果を生む
ことであろうと思われる。筆者の専攻から見る
と、アメリカ文学、歴史関係の書物は言うに及ば
ず、イギリス文学関係でも中世英文学のチョーサ
ーの最も信頼すべき稿本のエルズミーア版を初め
として、英国出版のルネサンス期、18、19世紀文
学者の70パーセントを収容し、20世紀の英米文学
者にいたっては約400名の文学者の作品が網羅的
にある。
 ことに筆者年来の関心の的であるイギリスの女
流小説家ヴァージニア・ウルフの限定初版本の
“Two Stories”と“Kew Gardens”(これらは
筆者一昨年の英国旅行でも見る機会がなかった)
を自由に見ることのできた悦びは忘れられないも
のがある。
 一般にU.C.と略称されるカリフオルニア州立
大学は1868年に、現在福岡市と姉妹関係を結ぶオ
ークランドに設立され、その後、隣りのバークレ
イに移り、次々と分校を州内に設立し、その数は
9校に及んで各々すぐれた図書館をもっている。
 8月9日筆者はサン・フランシスコ市から対岸
の学都バークレイを訪れ、U.C.の図書館を見学
する機会を得たのである。日比谷公園の18倍にも
及ぶという720エーカーのキャンパス内には種類
の異なった三つの図書館のあることを教えられた
のは婦人司書のミッシェル女史からであった。先


← P.3 図書館報 P.5 →