
No.15.1977.5
鳥 山 隆 三
| GNP 世界第2位を誇り、アメリカ、西ドイツ とともに Engine countries とさえいわれる経済 大国の日本ではあるけれども、こと図書館と博物 館に関する限り、日本は残念ながら先進国の仲間 入りはできず開発途上国なみ、もしかするとそれ 以下かもしれない。図書館白書 '77 によると日本 の公共図書館は50年度で1249館、欧米なみにする にはさらに5500館が必要であり、中身の蔵書数 も1000人当り297冊で、ソ連の5345冊、デンマー クの3559冊などにくらべると10分の1以下であ る。博物館になると全くお話にならない。 文化都市を自負する福岡市は文化行政は甚だ貧 弱で、市立図書館は昨年やっとできたばかり、そ れもマリーン・タワーのレジャーセンターを改造 したものである。美術館もやっと軌道に乗ってき たが、博物館はとても見込はない。福岡市が政令 都市になった時に、政令都市になるには図書館・ 美術館・博物館が完備していることを条件にする 位の制限があってもよいのではないかと書いたこ とがある。東マレーシア(北ボルネオ)の小さい 都市でさえ市立博物館をもっている。 大学に図書館と博物館があることは先進国では 当り前のことであるが、日本では国立大学でも秋 田大学の鉱山博物館、東京大学の研究資料館が博 物館といえる位のものであろう。大学施設基準に 図書館の蔵書数、席数などには最低基準が示され ているが、博物館のことは何一つ書いてないらし い。日本の博物館法では博物館は社会教育機関で |
あり、博物館活動の原動力となる研究活動を軽視 している。博物館という名称がつくと博物館法に 規制されるので、それをきらって東大では英訳名 はMuseumであるが、名称は研究資料館となっ ている。 大学の図書館は学習図書館と研究図書館の二面 性をもち、これをどう調和させてゆくかむずかし い問題である。この館報の1月号(No.14)に山中 教授がオハイオ州立大学のことを書かれている が、これが学習図書館としてのあるべき姿であろ う。しかし、このようなアメリカ式の完全な教育 プログラムを準備することは教授にとってはかな りの負担であろう。 研究図書館、とくに自然科学系の図書館には加 速度的に増加する情報を研究者の要請に応じて適 切に提供する任務が課されている。これは言葉で は簡単であるが、実際には大変な仕事である。学 習図書館の蔵書は単行本が主となるが、自然科学 系研究図書館の生命は学術雑誌である。実験科学 の領域では分野によって異なるが、たとえば理論 物理関係では、必要なバック・ナンバーはせいぜ い2〜3年前のものまでで、10年もすると古典に なってしまう。それに対して時間的・地域的要素 の入りこんだ“場の科学”(field sciences)では地 域別(アメリカを例にとると州単拉)の報文が著 しい量に達する。また、私の専門の古生物学では 1800年代の始めのバック・ナンバーまで時には必 要である。 |
| 図書館報 | P.2 → |