No.20.1978.10


私のすすめる一冊の本

 学問事始めとして、
この書をすすめたいと
思うが、これには本か
ら逃げずにすむ読書
のすすめがある。「い
ずれの書をよむとて
も、初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず、まづ大抵にさらさらと見て、他の書にうつり、これやかれやと読ては、又さきによみたる書へ立かへりつつ、幾遍もよむうちには、始め聞えざりし事も、そろそろと聞ゆるやうになりゆくもの也。」(p.19;p.39−40)一遍にわからねばいかん、とすれば落ちこぼれも出よう。ほんとうのことは時を得て向うから聞こえてくる。「言と事と心と、そのさま大抵相かなひて」(p.43;p.44)あるのが良書である。文字の末にかかわって行きなやむのでなく、言から事と心とを肉声として聞くことにはげみたいものである。
            (人文学部教授 田所 信成

 この本は、公害から見た日本研究という副題がつけられているように、外国人による日本の環境汚染・公害問題に関するルポルタージュ風の読み物である。日本の環境問題についての外国、こと
にアメリカでの関心は高く、日本の経験から多くを学ぼうとしているが、この本は、アメリカの大学ではテキストとして使用されることもあるという。主として住民運動側に立った情報にもとづいた内容であり、その点で同じく外国人の目からみた日本の環境問題のレポートである、O E C D レポート “Environmental Policies in Japan” に比べて、日本へのより厳しい評価が多く見かけられるが、日本のかかえている問題をこのように理解する外国人もあることを知ることは有益であり、特に、諸外国との関係で日本の今後のあり方を示唆する結論の部分は、多くのことを考えさせてくれよう。
           (法学部助教授 浅野 直人

 本書は、仏教の研究者・伝道者・修行者である著者が、昭和39年に行なった“誰にも分かる仏教入門の連続講義”の最初の部分をまとめたものである。その続講をまとめた『佛との出会い』、『大悲風の如く』と併せて三部作をなす親しみやすい仏教入門書であるとともに、鋭い洞察に富む人生案内書である。本書では、釈尊の生涯に始まって、生における苦しみや病気と、それから脱出する法、無我・般若・空・罪などの仏教における根本的諸問題が、著者の奥深い該博な学識と自らの貴重な体験に裏づけられながら、平明かつ簡潔な文章


図書館報 P.2 →