アメリカの大学図書館
      −Utah 大学の場合−
                百  武     秀
 「あちらの大学では本の貸出手続は実に簡単でしたよ。書物にはりつけたバー・コードをライト・ペンでさっと一なで、これでOKですから。」在外研究から帰って早速図書館でこういいました。さほど珍しくもない体験をとかくひけらかしたいのと、それに我が大学の図書貸出手続に改めて煩雑さを感じたからでもあります。それならあちらの図書館事情をとすすめられ、与えられた表題はいささか重すぎますが、どうかアメリカの一地方大学の場合とお考え下さい。
 一昨年の11月から一年聞、アメリカの Utah 州立大学に滞在し、この間同大学の図書館と大学の所在地である Salt Lake City の市立図書館をよく利用しました。もともと図書館そのものに興味を持っておりましたし、特にアメリカの図書館の機能のよさについては耳にしていたので、それを実際に利用できることを楽しみにしていました。上記二つの図書館はともに地方の標準的な規模と機能をもっているように思われます。
 Utah 大学は、1978/1979年度の University General Catalog から引用すれば、1850年設立でこれは Missouri 河以西の最も古い大学であると誇っています。現在、人文学部から医学部にわたる綜合大学で、12の学部と大学院を有し、学科の数は学部で69、大学院で43。学生数は約22,000、教員および医学部病院も含めた研究者は3,500人。キャンパス敷地は6平方キロメートルもあり、Salt Lake City の東、Wasatch 山の麓に広がっています。Salt Lake の谷は1847年、この地に移住して来た Mormon 教徒によって開かれたもので、他宗派の迫害に耐えかねた彼らは遙か2,000キロのかなた、Illinois の Nauvoo から大西部の平原と山河を越え、途次に斃れた数千の死者を路傍に埋めながら遂にこの谷にたどりつき、そしてその3年後にはもう Utah 大学の前身を創設しています。厳しい生活条件の下でなお学問に高い価値をおくこの人達に感嘆しますし、この気風は今も町や大学に生き続けていることをいくつもの事例で感じることができ
ます。当時の荒地も今は緑濃き谷となり、キャンパスの丘から見おろせば町は深い木立におおわれ、その向こうに大塩湖、Great Salt Lake が光って見えます。
 話が少し本題からはずれました。ところで Utah 大学の図書館ですが、本館は寄贈者の名を記念して Marriott Library と呼ばれ、モダンな5階建でキャンパスの中央に位置しています。この他に分館が五つ、社会学、経営学、法学、数学および医学の各学部にありますが、ここでは本館についてお話しましよう。この図書館はアメリカにおける最も美しくかつ機能的な図書館の一つであると University Catalog にありますが、たしかに新しく、広く、清潔で、何よりも新式の利用しやすい形態と配置をもっています。図書館の機能、活動状況からみてアメリカの地方においては大学は学問・文化の中心的役割を果し、そして図書館はその大学の中核であるように思われます。実際、この Utah 大学の図書館は西部山岳地域におけるリサーチ・センターたることが法律で規定されています。このようなわけで大学の図書館でありながら市民は誰でも自由に利用できます。子供ですら。図書はすべて開架式です。閲覧席のテーブルと椅子は大きくかつ上質。全館常時暖冷房、床はどこもじゅうたん敷であることは常識のようです。開館時間は、学期中は朝7時半から夜11時まで、日曜も夜10時まで開いています。学期と学期の間、大学は4学期制ですからこの期間は長くて2週間程度です。この期間だけ閉館は午後5時で日曜は休館でした。図書館では読書だけでなくオーディオ・カセット、ヴィディオ・カセット、映画フィルム、レコード、35mmスライド、絵画等の視聴覚設備が利用できますし、コピー、写真の現像もできます。タイプライター、小型の計算器の貸出もあり、その他、小グループの学習室がいくつも用意され、講演や映画のホール、展示場などもありました。蔵書数は約150万、定期刊行物15,000種、地図8万点、合衆国政府発行物のすべてと、政府の全公的記録文書のマイクロフィルム。非印刷物ではテープ、カセット類、フィルム、レコード、絵画(名のとおった原画がかなりありました)、それに膨大な点字の書物も。Interlibrary Loan Service の制度で州内および国内


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