知られているとおり、アメリカは国家社会の組織において民間上位の国家であり、法規制において判例法を中心とするコモン・ローの国家といわれている。情報の公開を民主主義の根本原則とし、1966年の「情報の自由に関する法律」(Freedom of Information Act)により行政府所有の情報に接近し得るアクセス権(right of access)を規定しているが、また企業内容の開示を産業民主主義の基本原則とし、公開会社法としての1933年証券法(いわゆる証券真実法 Truth−in−securities Act,発行市場関係)、1934年証券取引所法(流通市場関係)などを制定している。したがって、連邦証券諸法は単なる証券の発行・流通に関する行政的規制法ではない。
 1913年の L.ブランダイスの「他人の金銭−銀行家の用法」(Brandeis,Louis;Other People’s Money;and How the Bankers Use It.Balimore,McClure),1930年の J.M.B.ホクセイの「投資家のための会計」(Accounting for Investors,J.of A.,AIA,Oct.)などにより開示の必要性ないし財務情報の有用性の転換が明らかにされていたが、1929年10月24日(いわゆる暗黒の木曜日)のニューヨーク株式取引所における相場の大暴落に始まる世界的大恐慌を直接的契機として前述の連邦証券諸法が成立した。
 連邦証券話法の開示理念(disclosure philosophy)は、F.D.ルーズベルト大統領の1933年証券法制定のための議会に対する教書に述べられた「買主注意せよ」という古い法諺と、これに付加された「完主も注意せよ」(let the seller also beware)である。証券取引においては、売主も企業内容の真実牲を開示する義務があり、この義務を果すことによって、株式会社の所有と経営が分離されたことにより散在している不在投資家(absentee and scattered investment groups)
を保護するというわけである。
 AICPA(アメリカ公認会計士協会、前身はAIA)の会計研究公報(ARB),会計原則審議会意見書(APB Opinions).会計原則審議会説明書(APB Statements)および AICPA などによる財務会計基準審議会説明書(FASB Statements)とならんで、SEC(1934年証券取引所法により創立されたアメリカ証券取引所委員会)の会計連続通牒(ASR)と規則 S−X(Regulation S−X,わが国の財務諸表規則に相当するが、第2章に監査報告(証明)規定が設けられている)が一般に公正妥当と認められた会計原則(GAAP)を構成するといわれている(この考え方は狭隘であり、筆者はアメリカ会計研究学会(AAA)の基礎的研究業績も含まれると解したい)。
 上述の SEC の ASR と規則 S−X の双方は、1950年版規則 S−X の前書き(preface)により、従来、財務諸表の形式と内容を述べる(relates),とあったのを形式と内容を統括する(governs,筆者傍点)と改訂していることに注目したい。ここには、双方の有機的一体化と会計原則への代替性の強度化がみられる。さらに注目すべきは、開示(disclosures ないし disclose)という用語が、1938年4月25日付 ASR No.4(財務諸表の管理方針、Administrative policy on financial statements)において初めて用いられ、1940年12月5日付 ASR No.19(マッケソン・アンド・ロビンス会社事件におけるー発見と結論の概要、In the Matter of Mckesson & Robbins,Inc.−Summary of findings and conclusions)においても用いられていること、規則 S−X では1950年版において初めて用いられていることである。
 次いで、1963年8月の「SEC 証券市場特別調査報告書(いわゆるコーエン報告書)」(SEC:Report of Special Study of Securities Markets of the SEC,1963)と1969年3月の「SEC ウィート報告書、投資家に対する開示−33年法、34年法における連邦管理政策の再検討−(いわゆるウィート報告書)」(SEC:The Wheat Report,Disclosure to Investors;A Reappraisal of Federal Administrative Policies under the’33 and’34 Acts,C.C.H.,Inc.)が登場するが、とくに後者は、以後における SEC における開示


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