| き、無矛盾性の推論(証明)を経て得られた結果を “定理” (命題)と呼ぶ。一つの “定理” を応用して得られる命題はまた一つの“定理”となるわけである。このようにある “公理” から出発して一つの数学体系を構成していくことを “公理体系” と呼ぶならば、真に現代数学はこの体系に沿って発展してきたと云えよう。古くはギリシア時代のプラトン、ピタゴラス、アルキメデスなどに始まり、特にユークリッドによって幾何学が体系付けられ、これが現在でも根底にあることを知っている。(〔3〕、〔4〕など。)次に科学の発展と数学との関連について解析学の一分野の研究者として考えることを述べてみよう。自然界および人間社会の諸現象を正しく把握し、そのメカニズムについて研究することが “科学” であるとする。今、対象を一つ限定したとする。たとえば、”コップに水を入れ、その周囲を冷却していくとき水は氷に変化(凝固)していくが、その状態を調べる。” あるいは、“池の中に石を投げて、その波の伝わり万(伝播)について調べる。” このとき、関係者はまず実験、観察、調査を行い情報を得ることから始める。情報量の豊富さと測定の精密さが真実への誤差に影響するが、これはいわゆる “大数の法則” に従う。次にこのデータを分析、統合する。この段階では統計確率的知識が役立つし、その処理では、今日、コンピューターが威力を発揮する “傾向”、“原理” を探求する。その時、理論的根拠を与えるのが、“数式化” であり、良く知られた物理、化学の法則は何らかの形で“数式化”されているのを想起して戴きたい。この段階では数学的発想、構成、推論が不可欠であろう。このように一たび “原理 ”が得られたならば、その応用を試 | み、応用例を豊富にして信頼度を調べる。結局この一連のパターンをサイクリックにくり返せばより信頼度の高い “原理” を構成していくことになり、その分野の研究は発展していくのである。自然現象の中では、拡散、平衡、波動が重要であるが、これらを記述する関係式は普通、“微分方程式” と呼ばれるもので、極限の概念を確立したニュートン、ライプニッツ以来、微分積分学の発展と共に多くの微分方程式が設定され、その解の研究が盛んに行われてきた。(〔5〕〔6〕など。)すべてを語ることはできないが “数学” には哲学的な独自の分野もあるし、諸科学と密接な関連を持つ分野もあるわけで、ある数学者が「数学は、どの分野に限らず、理論を組み立てていくとき、その推論の流れには無限の空間を感じ、詩的な美意識さえ持つものである。」と述べているように、無限の可能性を秘めた素晴らしい学問の一つであると思っている。(理学部 助教授) 参 考 文 献 〔1〕解析概論,高木貞治著,岩波書店 〔2〕“数はほんとうに「ある」のか”,数学セミナー 1978年11月号,野崎昭弘著,日本評論社 〔3〕数学史(T),ルイブニコフ著,井関清志,山内 一次訳,東京図書 〔4〕数学をつくった人々(上),E.T.ベル著,田中 勇,銀林浩訳,東京図書 〔5〕偏微分方程式論,ペトロフスキー著,渡辺毅 訳,東京図書 〔6〕物理数学の方法,L.シュクルツ著,吉田耕作, 渡辺二郎訳,岩波書店 |
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