図書館報
No.46. 1987. 1


アメリカの大学図書館を利用して
高瀬 光夫

 六年間の米国留学生活を終え、一昨年帰国した。当時を振りかえってみて、米国と日本の大学の最も大きな違いの一つは、図書館が大学で果している役割の大きさではないかと思える。米国の図書館は優秀な研究者や学生を育てる上で、大学内で中心的な役割を担っているといっても過言ではないだろう。
 博士課程にいる大学院生の多くは、大体図書館とアパートの往復の毎日という生活を送っている。大量のアサインメントと試験に追いまくられて、そういう生活をせざるをえないというのが、正直なところかもしれない。私もそういう生活を可能にした図書館がなかったならば、留学当初の目的は果せなかっただろうと思っている。
 以下述べる内容は必ずしも全米の大学図書館一般についてあてはまるわけではないが、留学先が州立大学(ニューヨーク州)であったので、米国で特に変わった大学ではなく、典型的な大学の一つの話と考えてもいいであろう。
 利用者の立場からみて、図書館に関して特に有難いと思った点は主に次の五つがあげられる。第一に夜遅くまで開館しており、また開架式であったため、図書館をあたかも自分の勉強部屋のように使うことができた。クリスマス休暇や感謝祭休暇等の間は少し開館時間が短縮されたり、休館になったりしたことはあったが、一年を通じてほぼ毎日開館していた。さらに学期末試験期間前とその期間には、一部の図書館は二十四時間開館された。第二に館内は完全冷暖房であったことである。

暑夏にエアコンのないアパートで勉強せずに済み、研究が季節にかかわりなく同じペースで継続できたことは、特に貧乏学生にとっては非常に有難いことであり、研究の「効率」を高める上でも大きく貢献している。第三に図書館のある建物の中に、いろいろな自動販売機が置いてあり、勉強に疲れた時にはスナックやアイスクリームを食べたり、コーヒー等を飲んだり、また友人と会話を楽しんだりしてリラックスできたことである。近くには音楽図書館もあり、クラシックからロックまでのレコードが集められているので、好きなレコードを聞いて休むこともできた。また館内の雑誌コーナーにはソファーが大量においてあって、勉強の合い間に雑誌や新聞を読んで休むこともできた。これらのことは短時間の勉強には意味はないことだが、長時間に渡って図書館で勉強し続けることを可能にしている。第四に大学の講義でテキストとして、あるいは参考文献として指定された本は、借りたい人がたくさんいることから他の本と区別され、別のコーナーに集められて、貸し出し期間を二時間から一日までの範囲内でクラス分けされ、多くの学生が利用できるように工夫がされてあった。この制度は参考文献をすべて買わずに済むという点で貧乏学生には有難いことであるし、また講義をする側も多くの参考文献を遠慮なく指定できるという点でよい工夫だと感じた。第五に通常の本の貸し出し期間が、短かくとも一か月はあって、貸し出し冊数に制限はなかったことである。あまり返却期限を気にせずに安心してじっくりと本を借りて読むことができる。


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