19.[絵本勇士子【えほんいさみじし】]

(刊)半紙本一巻一冊
文化七年(1810)正月刊
(江戸)北尾恵斎政美【きたお・けいさい・まさよし】[画]
江戸 西村源六【にしむら・げんろく】板
[江戸]春風堂野代柳湖【しゅんぷうどう・のしろ・りゅうこ】[刻]

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    恵斎の兄弟子でもある戯作者・山東京伝(北尾政演)が序(計一丁半)を 寄せており「(前略)凡【およそ】獅子の尊【たっとき】ことあげてかぞふべからず。書肆文刻堂の主人、 自此【みずからこの】画本を勇士子【いさみじし】となづけるも、士子は獅子の響【ひびき】をかり、 猛将勇子【もうしょうゆうし】のいきほひある、画者の筆意の猛々しきを、獅子のいさむにたとふるの意 【こころ】なるべし(後略)文化庚午孟冬 江戸醒醒斎京傳識(印)」と記す。
    内容は24.『略画式』(九丁裏・下左図)でも おなじみの股野(景久と真田与市の巨石投「恵斎と秋圃図柄 ・筆法の模倣」参照) からはじまって、 敦盛と直実、巴御前といった女武者も含まれ、八幡太郎義家まで、源平の合戦の勇者を中心に物語の十四 場面を紹介する。彫は、一連の略画式モノと同様、春風堂野代柳湖刻だが、武者や人物は略画ではなく精緻な 筆法で描かれ、背景には狩野派風の樹木等もみられる。全丁絵が中心で仮名が中心の平易な文を添える構成で あるため、子供むきの絵本として刊行されたか。本書以外の伝本は未詳。