4.わすれくさ(外)
1(A).2(B).『葵氏艶譜』に和文序を寄せ、
3.『つはものつくし』序・撰者でもある奇渕(花屋庵)撰による彩色版絵俳書。
本文は「春上」「春下」「夏」「秋冬」の四冊。「春上」の「小朝拝、初卯詣」からはじまって「秋冬」の「鵜祭、宝舟」まで、
各地の四季行事を描いた絵をはさんで、大坂を中心に江戸から長崎まで計二七四名(「秋冬」巻末「俳家名録」)による折々の
発句が寄せられる。刊年は明記されておらず序跋も無いが、3『つはものつくし』と同じ頃の刊行と考えられるのは、同様の
表紙が用いられている所からの推定。また、「春下」「夏」「秋冬」巻末に「俳家名録」と「画名家部」を所収し「秋圃(割書)
筑前秋月藩中/葵氏」とあることから秋圃が大坂を離れた後の刊行とみられる。
絵師は、他に高島千春(京都住)、森徹山、岡熊岳、多賀子健、山中松年、宮本君山、
中村芳中、長山孔寅、奥文鳴(京都)、上田公長、巣兆(江戸)の計十三名で、内十名が大坂在住者。秋圃は、
中でも最多の三巻総計八図を担当(「春上」・「鷽替 正月七日太宰府」、「松囃 正月十五日筑前博多」(計二図)。
「夏」・「ぱいろむ(ペーロン)五月五日長崎」、「さつを」(狩人)、「山笠 六月十五日博多祭」(計三図)。
「秋冬」・「しらぬ火 七月三十日筑紫」、「御霊祭 八月十八日華洛」、「鵜祭 十一月上卯日能登」(計三図))。
筑前はじめ各地の行事や景物等を躍動感ある筆遣いで描く。特にペーロンや山笠の図は恐らく板本として画かれたもの
として初めてではなかろうか。(展示パネル『わすれくさ』にみる九州の歳事参照)
全図に、3『つはものつくし』と同様の落款「秋圃「秋」「圃」(朱陽刻連印)」がみられる。