ご 挨 拶

     福岡大学図書館は、中央図書館、医学部分館、理、工、薬、スポーツ科学部の各分室を含め約150万冊の蔵書を有し、 「ヨーロッパ法コレクション」、「江戸時代・九州文献コレクション」、「グリム兄弟コレクション」など稀覯書も多数架蔵しております。
    これまで4回にわたって、これらのコレクションの展示会を行って参りましたが、今般福岡大学が創70周年を迎えるにあたり、 これを記念して「創立70周年記念図書館特別展-和本の美-」を開催することになりました。
    今回は近世の絵師として、その半生や画風に共通する点が多い斎藤秋圃と鍬形恵斎の作品を、 また当時広がりを見せていた郷土俳壇の俳書を辿ります。
    斎藤秋圃については、その前身である双鳩が関わった風俗画本で、海外のコレクターに極めて高い評価を得ていた 「葵氏艶譜」の初版と補刻を同時に展示いたします。この二点を揃えて架蔵する機関は、国内は勿論、海外にも存在しておらず、そのような優品を 展示できるのは極めて画期的なことであります。
    鍬形恵斎は秋圃や北斎といった同時代を生きた絵師に多大な影響を与えた「略画式モノ」や鳥瞰図、新機軸の名所図会といった 板本を中心に展示いたします。
     18世紀の出版分野において、我が国の色摺り絵本は世界でも最高の水準を誇っており、その中でも後世まで影響を残した 秋圃と恵斎の作品は、国内随一のコレクションといっても過言ではありません。必ずや皆様のご期待に添えるものと確信しております。
    図書館では、今後順次、画像処理システムによるデジタル化を図り、ホームページなどを通じて多くの情報を公開し、 生涯学習の場として、広く市民の皆様に活用して頂けるよう「開かれた図書館」を目指して努力する所存です。今後ともなお一層のご指導と ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
    なお、今回の展示会を開催するにあたり、ご協力いただきました丸善株式会社の関係者の皆様、並びに和本の収集、 目録、解題作成など整理全般にわたって適切なる助言とご指導を賜りました本学人文学部中野三敏教授に深く感謝し、厚く御礼申し上げます。

福岡大学図書館長  池上 龍太郎