教員お薦めの本

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法学部

公開日:2020年1月8日
推薦者名:櫛田 久代

インターネットが社会に普及し、SNSが急速に発展し始めた当初、物理的空間を越えた公共空間の新たな可能性が注目されました。しかし、あふれんばかりの情報の海の中で、実際に私たちは関心のある情報世界から外に出ることはなく、人によっては、自ら好む情報世界の中にいることすら自覚しないまま生きています。しかも、今日のインターネット社会は、AIのアルゴリズムが個々の求める情報を先読みし、同じキーワードを入力しても、各々の選好に応じた検索結果をもたらします。人々が異なる情報空間に閉じこもり、議論の共通基盤が整わない中で、私たちは果たして有意義な議論ができるでしょうか。議論は言い争いになるか、議論そのものをあきらめるかになりそうです。インターネットの発達がもたらす技術革新は、コミュニケーション手段の進歩ですが、一方で、民主主義の社会的基盤の退化を招きます。2011年に出版されたものですが、インターネット社会の根本的な問題点についての分析は、今もなお有益です。
公開日:2020年1月8日
推薦者名:櫛田 久代

「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの転換」は、農村共同体から利益共同体あるいは機能分化社会への転換として近代化における社会の変化および人間関係の変化を説明する有名なフレーズです。本書は、アメリカ合衆国内の地域社会における自発的結社の衰退とともに、現代ではそれに代わる機能を利益団体が担うようになった過程を分析しています。しかし、利益団体のような機能的な関係性だけでは、地域社会の中で自発的結社が持っていた社会関係資本(ソーシャルキャピタル)を代替することは困難です。本書は、かつての階級区分を越えた市民社会が失われた現代における民主主義の危機について警鐘を鳴らしています。
公開日:2020年1月8日
  • 楽しくなければ仕事じゃない : 「今やっていること」がどんどん「好きで得意」になる
  • 干場弓子
推薦者名:櫛田 久代

「キャリアプラン」、「効率」、「好きなことを仕事にする」、「夢をかなえる」、「ロールモデル」、「ワークライフバランス」、「嫌われてはいけない」、「リーダーシップ」、「自己責任」、「自己成長」という言葉の数々は、私たちの日常生活あるいは仕事の中で何かしら影響を与えているのではないでしょうか。一般的に好ましいとされるポジティブな言葉ですが、正直なところ、これらが金科玉条のように掲げられる今日の風潮は、とても息苦しいと思わざるをえません。人の価値観や生活・仕事のペースはそれぞれ異なりますし、状況に合わせて目標も変わります。そうした違和感を見事に表現してくれているのが、本書です。干場さんは、先述の言葉を、働く人を惑わす10の言葉と痛快に批判します。そして、それぞれの言葉のもつ功罪の、特に、罪な部分を自らの人生経験から卒直に述べています。本書は、私たちの思考をより自由にしてくれます。確かに、就職活動や働く場では、こうした言葉が求められることもあるでしょうが、くれぐれも絶対視は禁物です。
公開日:2020年1月8日
推薦者名:櫛田 久代

本書は、2016年米大統領選挙時にトランプ氏に投票したラストベルト(製造業が衰退した地域)の労働者、新南部のキリスト教保守派、都市郊外に住む中産階級の人たちへのインタビューを通して、アメリカ社会および政党政治内部で起こっている変化を描き出しています。著者は、トランプ支持者だけでも450人もの人々にインタビューしており、本書からアメリカ人の肉声が生き生きと伝わってきます。インタビューを通して、私たちはトランプ氏支持層の根底にある思いに気づかされます。それは、色々な立場や考え方があるにせよ、職を得て働きたい、働けば生活ができる社会であること、そして、社会の一員として地域社会に貢献したいと思っていることです。一見突拍子もない言動で知られるトランプ氏ですが、既存の政治家たちが取り上げなかった問題に焦点を当て、一般の人々の本音に寄り添うことでいかに支持され続けているのかを教えてくれるのが本書です。『ルポ トランプ王国―もう一つのアメリカを行く』(岩波新書、2017年)の続編です。
公開日:2019年3月27日
推薦者名: 實原 隆志

「社会調査」は世界中で行われており、皆さんもいろいろな調査結果を耳にしたことがあると思います。この本ではそうした調査の方法や調査結果の分析のあり方を、具体的な調査とその分析に対する歯切れのよい批判も行うことを通じて論じています。やや古い図書ではありますが、政府の統計が問題となっている昨今において読む価値のある図書だと思います。また、データの分析手法を知ることで、野球やサッカーのような、スポーツの戦術的なデータ分析の場面でも役立つと思います。
公開日:2019年3月27日
推薦者名: 實原 隆志

ドイツの戦後40周年という節目に、ドイツの過去を振り返る演説です。この演説ではドイツの「過去」に触れることで、敗戦前後の市民の苦難、ドイツが諸外国に対して行ったこと、ドイツ政府がドイツ国内で行ったこと、そしてそれらの責任の所在(責任者)、を改めて思い起こそうとしているように思えます。日本で戦争、ないしは原爆投下のことが語られる際には、それによって大変な目に遭ったという話で終わってしまうことも少なくないことを考えると、文体・訳語の美しさも含めて、この本で示されているドイツ流の第二次世界大戦の振り返り方に、ぜひ触れてほしいと思います。
公開日:2019年2月25日
 推薦者名:石川 友佳子

『日本製紙石巻工場は、家族や知人、同僚たちを亡くし、家や思い出を流された従業員たちが、意地で立ち上げた工場だ。
だが、読者は誰が紙を作っているかを知らない。』
日本製紙石巻工場を舞台に丁寧な取材を行ったノンフィクション。石巻工場は、東日本大震災により壊滅的被害を受けながら、わずか1年で復興を遂げた。
震災時の人々の行動、そして紙を作る彼らのプロ意識に感動します。また、何気なく手に取る文庫や教科書の紙に、ものすごい技術や工夫が詰まっていること驚きました。
公開日:2019年2月9日
推薦者名:下田 大介

ボスニア紛争を題材とするドキュメンタリー番組をディレクター自ら書籍化した本。国際世論を操作するPRのプロの手腕には脱帽しつつも、戦争とは、決して前線に立つことのないリーダーのわがままに、人々が知らず知らずのうちに付き合わされているにすぎないということに気づかされた。監視すべきは、敵対する隣国や隣人というより、自分んトコのリーダーの言動なのではないか。熱狂の中でも冷静でいられる(唆されたり、騙されたりしない)ように、現実をもっと知らなければと駆り立てられる。表層的で単純な構図ほど要注意! 丹念に調べて、自ら考え抜くことが大事! それは、どんな学問に取り組むときにも必要な姿勢。日々の学習の意義を見失いつつある学生にこそ、オススメの一冊。
公開日:2018年12月26日
推薦者名:櫛田 久代

アメリカ大統領制のイメージは、大統領権限が強く、行政首長である大統領がリーダーシップを発揮しやすい政治制度というものではないでしょうか。一方で、アメリカ合衆国憲法からは、アメリカの政治制度は、立法、行政、司法の三権力の抑制と均衡が最も徹底している制度であるともいわれています。この二つの文章は矛盾しないでしょうか。本来の憲法規定では権限が弱い大統領がいかにリーダーシップを発揮しうるのか、という著者の疑問を通して、制度と政治の関係について根本的な視点から考えさせられる良書です。
公開日:2018年12月26日
  • 神話の力
  • ジョーゼフ・キャンベル, ビル・モイヤーズ著 ; 飛田茂雄訳
  • 164/C14/1
推薦者名:櫛田 久代

何かを分析・考察するとき、比較という視点はとても有意義です。比較することで、相違点を通して分析対象の独自性が浮かび上がることもありますし、一方で共通点から普遍的な問題に気づくこともあります。今回お薦めの本は、比較神話学の世界的な権威、故ジョージ・キャンベルとジャーナリストであるビル・モイヤーズの対談集です。本書を読んで、単なる物語とみていた神話に対する見方が一変しました。世界各地の神話のエピソードやシンボルを縦横無尽に物語るキャンベルは、「神話は人間生活の精神的な可能性を探るかぎ」と捉えています。しかも、自分たちの神話ではなく他の神話を読むことで、神話がもつメッセージを受けやすくなるともいいます。様々な神話のエピソードやシンボルに対するキャンベルの解説にふれると、神話が私たちの体験を内面的にかつ社会的に意味づける社会的機能を果たしていることに気づかされ、とても興味深いです。
公開日:2018年4月11日
推薦者名:谷川 和幸

社会学の勉強を志した女性タレントが、東大の上野千鶴子先生のゼミに参加した体験を書かれたエッセイです。
内容は社会学に関係するわけですが、このエッセイで書かれているのはむしろ、学問とは何か、研究とは何か、研究者とはどのような生き物なのか、何のために勉強するのか、といった普遍的な気づきです。
とても面白く読みやすい文章で書かれていますので、大学で勉強する意味を見失ったときに気軽に手に取ってみるとよいでしょう。
公開日:2018年3月30日
推薦者名:菅原 和行

著者によれば、政治とは「価値の複数性や多元性を前提としながら、いくつもの『正しさ』の間で調整や妥協を図る営み」(39頁)です。こうした定義を踏まえ、現代の政治を観察した際、私がとくに関心をもったのがポピュリズムとの関係です。著者によれば、ポピュリズムとは「多数派にとって不都合な問題をすべて外部に原因があるとすることで、真の問題解決を避ける政治」(98頁)です。民主政治では多数派の意見が尊重されるべきでしょうが、すべてを多数決に委ね、少数派との調整や妥協を放棄したとき、政治は本来果たすべき役割を果たしているといえるでしょうか。現代の政治が抱える問題について、いろいろ考えさせられる本です。
公開日:2018年3月30日
  • 津軽
  • 太宰治作
  • 080/I95-2/3-90-5
推薦者名:安井 英俊

なんか違う…。太宰らしくないなあ…。というのが、この小説を読み始めてすぐの私の感想であった。当時、私は大学1年生であったが、いろいろと上手くいかないことが続いており、太宰治に救いを求め、太宰の作品を読みあさっていた。『人間失格』や『斜陽』で知られる太宰治はダークサイド(暗黒面)の小説家である。そのダークな世界観は、敗者や挫折者の心に寄り添い、至高の救いとなる。
芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんも太宰を信奉しているし、ロックバンド・ポルノグラフィティも「太宰を手に屋上に上がり、この世などはと憂いてみせる」(「今宵、月が見えずとも」より)と歌っている。すなわち、世の中を斜めから見るようなニヒルな気分に浸り、太宰と同じ無頼派を気どることにより、ネガティブな出来事をスタイリッシュなものへ転換する。太宰の作品にはそんな効果があると思う。
しかし、この『津軽』にはそんなダークサイドがない。それもそのはずで、『津軽』は、太宰が彼の生涯で最も明るかった時期に書かれた作品であり、タイトル通り太宰の故郷の青森県津軽地方の紀行文なのである。『津軽』は、『走れメロス』と同じく、太宰にしては珍しくライトサイドの作品である。当時の私は事前にそんなことも確認せずに読んでいたのだ。つまらないなあと思いながら最後まで読んでいくと、「さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行かう。絶望するな。では、失敬。」と、これまた太宰らしからぬ前向きなメッセージで締めくくられている。まあ、それはそれで元気をもらえるので、太宰の意外と明るい一面を知るには最適な作品であると思う。
印象に残っているエピソードとして、太宰が彼の乳母をしてたおばあさんと再会する描写があり、太宰が本当に喜んでいることがよく伝わってくる。『津軽』執筆の4年後、玉川上水で愛人と入水自殺したこの無頼派の男は、本当はただの気のいい坊ちゃんだったのだろう。
公開日:2018年3月9日
  • 世論
  • W.リップマン著 ; 掛川トミ子訳
  • 080/I95-2/1-222-1
推薦者名:櫛田 久代

『世論』(原書1922年刊行)は、20世紀初期の民主政治と世論について考察しています。世論とは何なのか、という問いはもとより、大衆民主主義の時代において、世論が生まれる前提となる私たちの社会認識がいかに形成されるのか、さらに私たちはどのように外からの情報に接しているのか等が多角的に論じられています。情報というと、私たちが接する外からの情報の真偽や操作性等が問題にされがちですが、リップマンは情報を受け取る側の内側の心理・認識メカニズムも重視にします。メディア・リテラシーという言葉は比較的新しい言葉ですが、リップマンの『世論』を読むと、今日のメディア・リテラシーを先取りする内容に驚かされます。
公開日:2018年3月9日
推薦者名:山下 慎一

最初は、突拍子もない設定に少し驚きますが、読み進めていくうちに、他人のミスに対して不寛容で安易に処罰を求める感じとか、腰を据えて考えずにすぐに答を求めてしまう感じとか、不確かで微妙な問題を不確かなままに受け止めることを恐れているような感じとか、そんな現代の社会のありように対する静かな批判のようなものが感じられて、自分自身のありようについても、いま一度考えさせられます。

公開日:2017年3月29日
推薦者名:久保 寛展

本書は、もともと日経新聞の連載小説として公表されたもので、これが単行本化されたものです。法律に関係するものではなく、あくまでも小説ですが、非常に面白く、一気に読んだ本です。最終的に六兵衛とは何者だったのか、わからずじまいでしたが、それを解き明かす周りの者の行動が興味深かったです。本書は、ぜひお薦めです。
公開日:2017年3月1日
推薦者名:東原 正明

ドイツの若者は自国が引き起こした第二次世界大戦とどのように向き合ったのか。敗戦前後に生まれ、1968年ごろに大学生となった若者たちによる学生運動が、環境・平和運動を経て、緑の党へと発展していく過程が描かれています。
公開日:2017年3月1日
推薦者名:東原 正明

社会の様々な場面で生じる事故や公害などの外部不経済を社会的費用をコストに算入するとき、はたして私たちは今と同様の生活ができるのでしょうか。本書は、自動車を題材にこの問題を検討しています。社会の「豊かさ」について考えるきっかけとなるでしょう。
公開日:2017年2月16日
推薦者名:久保 寛展
  
本書は、民事訴訟法学の泰斗で法務大臣も務めた三ケ月章先生の研究人生が述べられた非常に興味深い本です。とくに留学生活での経験など、非常に興味深く読みました。
公開日:2017年2月16日
推薦者名:久保 寛展 

本書は、民法学・法社会学の泰斗である川島武宜先生の軌跡をたどった非常に興味深い本です。とくに戦中から戦後にかけてどのような研究生活を送ってきたのか、また「論文の書き方」で述べられていることは、私自身も非常に参考になりました。ぜひ一読を薦めます。
公開日:2015年12月24日
推薦者名:安井英俊

元裁判官の著者が、一般にはあまり知られていない裁判所と裁判官の実態について詳細に書かれています。裁判官だからこそ知りえた「裏話」的エピソードもあり、裁判制度に興味をもつきっかけになると思います。
公開日:2015年12月24日
推薦者名:安井英俊

「日本刑法学の父」である団藤先生の人柄や思想が、わかりやすく書かれており、刑法に限らず法学全般に興味をもつきっかけになるのではと思います。憲法改正問題や死刑廃止論についてもわかりやすく書かれています。
公開日:2015年12月24日
推薦者名:山下 慎一

なぜ、私たちの生きている世の中は、こんなにも「生きづらい」のでしょうか。データを交えて、分かりやすく解説してくれます。
公開日:2015年12月24日
推薦者名:山下 慎一

法律を「解釈する」ってどういうことか、小説形式で分かりやすく解説してくれます。法学部に入る前に読んでおくと、法学に関するイメージが湧きやすいかもしれません。

公開日:2015年12月24日
推薦者名:山下 慎一

大学の勉強では、自分の頭で、物事をしっかりと「考える」ことが不可欠です。本書は、そもそも「考える」とはどういうことかを「考える」ための手助けとなるでしょう。文章が分かりやすく、挿し絵も非常に素敵です。
公開日:2015年2月26日

推薦者名:野田 龍一

ナチス支配下のドイツにあって、「狂気」の中で、「狂気」を「狂気」と、果敢にも批判したいくつかの集団があった。その1つが、ミュンヘンを中心とした「白いばら」であった。これを担ったのは、皆さんと同じ世代の大学生であった。この本を読んでいると自分がナチスに追われている気持ちになり、戦慄する。しかし、「白いばら」運動をささえたものは、かれらの宗教倫理、古典に対する素養、それに何よりも「人間性」であったことを知れば、現代日本に生きるわれわれにもおおきな励みともなろう。一読してみたい。

公開日:2015年2月26日

推薦者名:野田 龍一

将来を嘱望されながら夭逝した日本法政史研究者の遺作である。飛騨国を中心として、庶民身分でありながら法的知識・技術を有する者が多様に存在し、活動していたことを明らかにし、かれらが有していた法的知識・技術の内容、さらにその習得・伝播の実態について、原史料に即しておこなった研究である。わが国において西洋近代法を継受するインフラがすでに江戸時代に形成されていたことを、生き生きと知ることができる。

公開日:2015年2月26日

推薦者名:野田 龍一

ラブレー研究に生涯を捧げた著者のエッセー集。なかでも「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」は、読者の肺腑を貫く。著者の答えは、「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきではない」である。著者は、おもな素材をヨーロッパにおける宗教対立に求めている。しかし、その問題提起は、現代においてこそ瑞々しく、かつ生々しい。著者は、現代においては、「特殊な地域」を除き、「文明国」では、「いかなる宗教も不寛容ではない」し、「宗教の故に死闘は行われていない」という。このことばが、著者特有の「エスプリ」に聞こえるのは、わたくしだけであろうか。

公開日:2015年2月26日

推薦者名:野田 龍一

宗教の対立は、21世紀の現代にあっても、人類にとって、深刻な問題を引き起こしている。この書は、ヨーロッパ中世を舞台とし、幾多の主人に従者として仕えたヨナのヨーロッパ遍歴を縦軸とし、正統と異端との間での宗教対立を横軸とした小説である。ヨーロッパとは何か、宗教とは何か、そして、なによりも「人間」とは何かを考えさせられる。「キリストは笑ったか」というのも、1つのテーマとして登場する。

公開日:2015年2月26日
  • ジャン・クリストフ
  • ロマン・ローラン作 ; 豊島与志雄訳.
  • 1:080/I95-2/4-555-1 2:080/I95-2/4-555-2 3:080/I95-2/4-555-3 4:080/I95-2/4-555-4

推薦者名:野田 龍一

音楽家ジャン=クリストフの生涯を描いた大河小説である。モデルとなったのが、ベートーヴェンということもあって、ベートーヴェンの伝記と誤解されているが、それに尽きない。ドイツから出発して、フランス、さらに、イタリアと、ことなる文化の相互理解とそれにもとづく人間愛の完成こそが、この小説の根底にあるモチーフである。読者が、少年である時、青年である時、壮年である時で、読み方が変わってくる不思議な本である。

公開日:2014年5月15日
  • 次郎物語
  • 下村湖人著
  • 上:913.6/SH53-1/1-1 中:913.6/SH53-1/1-2 下:913.6/SH53-1/1-3

推薦者名:野田 龍一

若くして短歌の才能を讃えられ、髙田保馬の畏友でもあった佐賀出身の著者の自伝的小説。最近ようやくその生家を訪問し、短歌「母の骨」の凄さに惹かれ再読した。著者が学んだ佐賀中学は、わたくしの母校=佐賀西高等学校の前身校であることもあって親しみを覚える。人格の形成とは、いかにしておこなわれるべきかを、あらためて学んだ。

公開日:2014年5月1日

推薦者名:野田 龍一

著者は、その生涯を、ローマ法研究に捧げた。この本は、教科書として、第二次世界大戦後まもなく出版された本である。しかし、日本では、いまだに、この本を凌駕するローマ法の教科書は出現していない。法律、とくに民法の勉強が進めば進むほど、この教科書の偉大さを実感できる。学部学生のみならず、大学院学生にも一読を勧めたい。

公開日:2014年5月1日

推薦者名:野田 龍一

研究対象にひたすら沈潜することこそが、人格形成への道であること、そして、堅い岩盤に穴を開ける労苦を厭わない者だけが、政治家たりうることを教える本。翻訳もさることながら、ドイツ語原文での精読を勧めたい。この著者の『一般経済史要論』第4章を、ドイツ語で読んだのは、大学1年生の秋から大学2年生の夏にかけてであった。
(『職業としての政治』他、著書多数)

公開日:2014年5月1日

推薦者名:野田 龍一

2013年12月21日に逝去した民法学者の論文集。とくに、「民法理論の古典的体系とその限界」、「わが国における権利論の推移」、「契約の拘束力」の諸論文は、民法学を学ぶ皆さんにとって、必ずや「導きの星」となるだろう。40年前の著者にお教えを初めてうけて以来、これらの論文は、わたくしを叱咤激励してくれた。

公開日:2014年5月1日
  • 罪と罰
  • ドストエフスキー作 ; 江川卓訳
  • [上]:080/I95-2/4-613-5-2-1 [中]:080/I95-2/4-613-5-2-2 [下]:080/I95-2/4-613-5-2-3

推薦者名:野田 龍一

その名が知られているわりには通読した人が少ない本。これを読めば、読者は、主人公の心に乗り移って、殺人にいたる動機から罪の告白までを追体験することができる。ページを繰るたびに、ドキドキしてくるから不思議だ。法律の勉強を志す人、将来、警察官・検察官・裁判官・刑務官・保護観察官になりたい人にぜひ一読を勧めたい。

公開日:2014年4月8日

推薦者名:野田 龍一

本文124ページ、註725ページから成る本書を手に取れば、ギリシア語の「テキスト」が読めるということは、どういうことかが、わかる。古典研究のみならず、法律条文の解釈にあたっても、本書は、たいへん参考になる。ぜひ、一読してほしい。

公開日:2014年4月8日

推薦者名:野田 龍一

カエサルの『ガリア戦記』にも似た研ぎ澄まされた文語による体験記。戦艦大和の最後の出撃・轟沈から救出・帰還にいたる状況を、叙事詩にも似た文章でつづる。戦争の悲惨な現実を知ることもさることながら日本語の美しさをあらためて実感できる一冊である。

公開日:2014年4月8日

推薦者名:野田 龍一

著者は、その生涯を、初期中世ヨーロッパ社会経済史研究に捧げた研究者である。わたくしは、門外漢ながら、学部学生の時から、著者の業績に畏敬の念を覚えていた。一読すれば、著者のライフワークが浮かび上がってくる。「現代思想の先端に触れていなければならないはずの歴史家も、真面目な仕事をしようとすればその時間の大半は職人的な作業に費やさなければならない」との著者の「あとがき」を、けっして忘れることはあるまい。

公開日:2014年4月8日

推薦者名:野田 龍一

第二次世界大戦末期に戦死した若き学徒の日記および論文。いまは亡き兄がこの本をプレゼントしてくれたのは、わたくしが高校1年生の夏であった。一読して、その語学力・読書量・教養に驚嘆した。とくに、新一年生に勧めたい、わたくしの座右の書である。

公開日:2013年5月14日
推薦者名:野田 龍一
 
 治安維持法違反で服役した河上肇の1935年2月12日から1937年6月15日までの刑務所における日記である。昨今の獄中日記と違い、一読すれば、堅忍不抜の志操、想像を絶する教養の蓄積、人を見抜く慧眼、何よりも、その人類愛に感動する。ゼミナ-ルなどで刑務所見学をする機会があれば、見学前に、ぜひ一読しておくことを勧めたい。
 
公開日:2013年5月14日
推薦者名:野田 龍一
 
 法律学の勉強が好きになる1つの方法は、「法の現場」を歩いてみることである。野田ゼミでは、福岡を中心とする九州でおきた法律事件を取り上げ、訴訟記録を閲覧したり、「法の現場」を訪問している。モデルは、本書である。著者は、「宇奈月温泉事件」の舞台となった黒部峡谷その他各地を踏査し、「法の現場」を生き生きと描く。
公開日:2013年5月14日
  • 現代ロ-マ法体系
  • サヴィニー [著] ; 小橋一郎訳
  • 第1巻:322.32/SA92/1-1 第2巻:322.32/SA92/1-2 第3巻:322.32/SA92/1-3 他 全8巻
推薦者名:野田 龍一
 
 19世紀前半のドイツにあって、「学問」としての法律学の形成に全身全霊を捧げた法学者の代表作品。推薦者は、大学院学生時代以来こんにちまで35年間、この書と格闘してきた。ロ-マ法文がベ-スになっていて難解だが、第1巻の緒言だけでも一読したい。法律学研究における「歴史」の意味を考えるうえで、不可欠の書物といえる。
公開日:2013年5月14日
推薦者名:野田 龍一
 
 一戸建住宅を売るとき、不動産会社が、「環境良好・眺望抜群」と書いた。買主が買って転居してみると、近隣には暴力団組事務所があり、周囲にはマンションが屹立していて視界ゼロだった。不動産会社の責任はどうなるか。古代ロ-マ時代、キケロ-は、本書にあって、これに類似した問題を取り上げている。法律学入門書としても最適である。
公開日:2013年5月14日
推薦者名:野田 龍一
 
 セネカは、「怒り」に狂った人間の表情の分析から説き起こして、「怒り」が、他人のみならず、本人をも破滅させることを、生々しく教える。「キレ」やすい、きみやあなたに、ぜひ一読を勧めたい。この書物を読めば、人生で失敗することも少なくなろう。
公開日:2012年6月29日
推薦者名:屋宮 憲夫

国家の成立から現在の国民国家(資本主義国家)までの展開を暴力の組織化という視点を中核に論じる。ホッブス、スピノザ、シュミット、アルチュセール、フーコー、バリバール、ドゥルーズ=ガタリなどの論考が縦横に駆使され説得的な文脈の中で分析されていく。国家の暴力性と近代国民国家の構造、その歴史的現実性、そして国民が暴力の担い手であり同時に暴力の受け手である仕組、国民国家の総力戦争遂行基盤(国家アイデンティティ)としての「国家・国民の神聖化」と「生存共同体機能の経済的社会的強化」、我々の世界観・歴史感の構造や暴力性などのテーマについて、桜井均の「テレビは戦争をどう描いてきたか-映像と記憶のアーカイブス-」の現実的体験的考察を想起しながら読むと理解しやすく納得できる。
公開日:2010年3月17日
  • 夜と霧
  • ヴィクトール・E・フランクル[著] ; 池田香代子訳
  • 946/F44-1/2
推薦者名:野田 龍一

著者は著名な心理学者であった。アウシュヴィッツ強制収容所に送られた著者の体験記が本書である。本書は、強制収容所の実相を伝えるにとどまらない。強制収容所にあって、旧約聖書のヨブにも似た受難を生き抜いた著者の姿からは、多くのことを学ぶであろう。法律学にかぎらず、およそ学問を志す若い皆さんに、ぜひ一読をお勧めしたい。
公開日:2010年3月17日
  • 神聖喜劇
  • 大西巨人著
  • 第1部 上:913.6/O66/2-1-1 第1部 下:913.6/O66/2-1-2 第2部:913.6/O66/2-2 第3部:913.6/O66/2-3
推薦者名:野田 龍一

第二次世界大戦中対馬の要塞に送られた東堂二等兵が、各種法規をたてに上官に抵抗する姿が、印象的である。著者は、旧制福岡高等学校から九州帝国大学に進んだが、思想上の理由から退学処分となった。福岡およびその周辺も小説の舞台として登場するので親しみが湧く。「法の支配」とはなにか、をも考えさせられる巨大な作品でである。
公開日:2010年3月17日
推薦者名:野田 龍一

著者は、ラブレー研究にその一生をささげた。本書は、太平洋戦争中に著者が、ノートに大部分についてはフランス語で書いた日記である。この日記は、著者逝去後、後継者であった二宮敬によって発見された。戦時中の「狂気」の時代にあって、「狂気」の時代であったからこそ愚直に研究に専念した著者の姿は、わたくしの生涯の模範である。
公開日:2009年4月17日
推薦者名:野田 龍一

 日本民法は、ローマ法以来2000年の伝統のうえに成り立っている、といわれています。では、具体的に、日本民法のそれぞれの条文は、どのような系譜をたどって形成されたのか。これをあきらかにしようとしたのが、この書物です。著者が自裁なさったため、債権法の部分は、未完成におわっています。ただし、第709条については、巻末に独立の論文があります。同じ著者である『ローマ法』とあわせて、ぜひ、手にとってみてください。
公開日:2009年4月17日
推薦者名:野田 龍一 

 民法学者であった著者が残した論文を3巻にまとめたものです。内容は、第1巻が、法の解釈、第2巻が契約法、第3巻が家族法です。とくに、法の解釈と擬制に関する研究、債権の準占有者への弁済に関する論文、第3巻の遺言の解釈論が印象に残っています。各自の関心に即して、その中の1本でもいいですから読んでみてください。同じ著者による『契約法』も、ごらんになると、研究とは、いかにあるべきかを実感することができます。
公開日:2009年4月17日
推薦者名:野田 龍一
 
 法の解釈はいかにあるべきか。著者は、わが国における裁判例に対する批判的分析から出発します。そのうえで近代私法学の一形成者であるサヴィニーに立ち返ります。ともにすれば否定の対象としてしか見られない近代私法学の古典的体系の意義を、その思想的基盤としてのカント・ヘーゲルをふまえ描きます。哲学と法律学とがいかに不可分の関係にあるか、を教えてくれる本です。考え抜いて書かれた、読めば読むほど奥の深い一冊です。
公開日:2008年4月28日
推薦者名:畑中 久彌

法律学に砂を噛むような味気無さしか感じられなくなってしまった……。そんな人は、一度この本に目を通してみるのもよいかもしれません。全編を読み通すのは難しいと思いますが、冒頭の「法律学への不信」という部分だけでも、大いに参考になると思います。このほか、三ヶ月章『法学入門』という本の12~15頁も参考になると思います。
公開日:2007年8月31日
推薦者名:森永 淑子

交通事故による悲劇は後をたたず、遺族の声が報道されることも増えた。本書で著者は、子の事故死を契機とした保険会社との交渉、調停、刑事・民事裁判において交通事故がどのように「処理」されるかを、遺族の立場から丹念に叙述しつつ、感情論に走ることなく批判を加えている。近年の交通事故の厳罰化や、損害賠償に関する裁判実務の変化により、本書の内容は古くなった部分もある。しかし、交通事故に対していわば麻痺している我々の感覚への批判や、生身の人間であった被害者の死を機械的・定型的に「処理」することへの抵抗という本書が投げかけた問題は、今も我々の前に残されているのではないか。
公開日:2007年8月31日
推薦者名:森永 淑子

19世紀ドイツの著名な学者モムゼンの蔵書が近年イタリアで次々と発見されたのは何故か?火災、ナチス・ドイツの人種迫害、盗難、図書館員の過失といった様々な要素が絡み合って、本が数奇な運命を辿ったことが明かされてゆく。単なる謎解き本とも読めるが、書籍の電子化や廉価古書店の繁盛等を背景として書籍もどんどん捨てられる現代において、知的遺産をいかに守るか、価値ある本をいかに見い出し保存するか、図書館の役割などについても考えさせられる1冊である。
公開日:2006年10月2日
推薦者名:屋宮 憲夫

戦後61年を経た暑い夏、総理大臣の靖国神社8.15参拝が注視され、その是非が問われるなかで、メディアは、あの戦争の実態と責任の問題、国家と市民との関わり(公と私のあり様)を例年に増して取り上げた。本書は、映像メディアとして今圧倒的な影響力を持つテレビが、戦争について何をどのように描き、何を描かなかったのか、という問いを過去のドキュメンタリーを素材として実証的に考察したものである。戦争とそのもたらしたもの、人間と社会・国家のかかわり方、これらの日本的特性、メディアの役割、限界とその克服を番組制作者である著者が具体的かつ重層的に論じる。読み進めやすく理解しやすい記述だが考えさせられる内容に満ちている。
公開日:2006年10月2日
推薦者名:屋宮 憲夫

萱野稔人「国家とは何か」で論じる国民国家の構造の中でも、国家・社会集団により形成される主体性ではない主体性、個々の価値観・正義感に基づく規範性(義務感)を我々は形成しうるのか。著者は、カントに依拠しつつ、自律的反省、自己価値の認識、「生きるに値する生」・「行うに値する行為」の自己認識(実践的アイデンティティ)、その実践的な自己構成、他者の存在価値の尊重による正義の普遍化について論じる。実践的アイデンティティは、国民国家的集団アイデンティティのあり方をこのような「近代の理想」に変容する可能性を持つだろうか。本書は大部の翻訳書であるが記述は具体的であり、他の倫理学者の見解と著者の回答も付され、秋の夜長にゆっくりと読み進めたい。