No.1.1970.10.


図書館報の発刊に当って

図書館長  渡  辺  幸  生

 福岡大学はその前身福岡高等商業学校の創立以来35周年を迎え、昨年秋記念式典を挙げた。その式典の日11月3日に新築なった図書館の開館式を挙行したのである。新図書館は七隈のキャンパスでは三代目である。初代の図書館は昭和16年頃私はその仕事をしたので懐しい思出がある。残念乍ら戦災にあい、貴重な蔵書と共に焼失した。二代目のものは昨年迄大学の中心にあって、その任務を充分に果して来た。新図書館が完成したので、今は教務課学務課の事務室としてお役に立っている。新図書館は中央図書館として綜合的多角的任務を遂行できるよう設計されている。
 新図書館の新しい設備としては、まず閲覧室の多様化が目立っている。参考図書、開架図書、雑誌はそれぞれに開架閲覧室をもっている。それらの室には教職員のための個別閲覧用椅子を用意し、研究室とは異った快適な研究の場所を提供している。学生のための閲覧室は上記三つの開架閲覧室のほかに、1階3階に座席数800に近い自由閲覧室があり、更に4階には、グループ研究の便宜に供するため、大小三つの共同研究室が用意されている。視聴覚教育のための設備もあり、テープ、レコード、マイクロフィルムの所蔵庫とリスニング・ブース教室を用意している。テープコーダー、ステレオ、マイクロリーダー及びプリンター、ゼロックス、オートファックスなども備えており、学生及び教職員の利用に供される。この外大学院、薬学部、工学部、商学部第二部にはそれぞれ分室が設置されており、相当数の専門書を蔵している。これら分室の閲覧席数も計300席を超える。これらの分室を統括して、新図書館は大学図書館としての現代的任務を進んで荷おうとしているのである。
 大学図書館の大学教育に於ける役割の重且大なるものがあることは云うまでもない。殊に大学紛争以来、大学教育の理念と方法とに深刻な反省が加えられた。その結果一般教育について文部省は従来の制約を大幅に緩和し、大学当局と学生との自主性を尊重して、個性あるカリキュラムを組むことができるようにした。このような情勢下において、学生も教授も多角化した情報機関としての図書館の利用によってその研究と教育の方法に於て、一段と飛躍した世界を開くべきときが来たと思われる。既に井上安孝前館長が「新図書館の開館式を迎えて」(44年11月3日福岡大学学園通信第24号所載)に於て強調せられたように新図書館は新しい事態に即した努力を傾けるべく期しているのである。勿論職員の数、配置、設備の諸条件等に制約されることを免れないが、蔵書数やその他設備の点について云えばまず大学図書館の水準を超えるものといって憚からないであろう。
 ここに福岡大学図書館報を発刊する運びに至ったことは、関係者一同と共に私の深い喜びとするところである。これは研究者並びに教育者としての教職員との密接な連絡疎通を計り、研究者としての学生の自己開発の便宜を供し、静かなる研究の雰囲気のうちに、大学生活の真意義を見出すよう何らかの手引きをそこに提供することがねらいである。この館報が綜合大学としてのインターディシプリナリー(専門相互間)ないくらかの場を提供し、専門に偏りがちな現代学問のおち入りやすい欠かんを反省するよすがとなることも望んでいる。そして図書館学の進歩に即した福岡大学図書館の積極的役割を推進する所存である。
(法学部教授)



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