このような国際標準ができれば、各国の図書館統計の改善を促進する手がかりともなり、特に統計の発達していない国や、今まで図書館の統計をとったことのないような国々にとって大きな助けになることは明らかであるといってよい。
 この「国際標準に関する勧告」が総会で採択されると、加盟国はその国の実状に応じてこの勧告の受け入れにつき必要な行政措置をとることが要請される。どのような措置をとるかはもちろん各国の独自の決定にまつのであるが、ユネスコ憲章によると加盟国はこの勧告を一年以内に当該事項の所轄政府機関に提示し、かつ加盟国政府はこの勧告の内容に関して政府がとった措置についてユネスコに報告しなければならない。わが国の図書館統計の所轄官庁は文部省である。勧告案の内容は次号以下に説明するとおりであるが、上記のように図書館統計がなおきわめて不備である現状からみて、わが国でも図書館関係者の協力を得てかなり抜本的な措置を講ずることが必要となるであろう。(以下次号)     (経済学部教授)



宗教学入門書紹介

                   高 原 信 一

 大学における宗教学は、いわゆる宗教教育と同一ではない。まして、特定の宗教信仰の導入をめざすものではない。従って夫々の宗教信仰への入門書についてはここでは言及しない。むしろ我々は広く人類文化の歴史を通じて、宗教はいかなる役割をはたしてきたか、人生にいかなる究極的意味づけをあたえているかを見なければならない。この意味で宗教学は広く人間の理解に資することをめざしている。このような意図のもとに、大学における宗教学の入門書として適わしいと思われるものを若干紹介することにする。
  1)岸本英夫著『宗教学』昭和36年、大明堂、280円、宗教学という専門分野におけるわかり易い教養書であることを目的としている。従来の宗教学概論が一般に西洋における宗教学の研究に限られていたのに対して、広く東洋、日本をも考慮に入れて、宗教学に一つの新しい体系をあたえることを試みた意欲的概説書である。

 2)岸本英夫編『世界の宗教』昭和40年.大明堂、650円、上記『宗教学』の著者が構想をねり,その企画をもとにして、弟子たちが分担執筆したものである。文化史的展望のもとに次のように世界の各宗教を紹介している。1.未開社会の宗教、2.古代宗教、3.ユダヤ人の宗教、4.キリスト教、5・回教(イスラム)、6.インド人の宗教、7.仏教、8.中国人の宗教、9.日本人の宗教。
 3)西谷啓治著『宗教とは何か』(宗教論集(1))、昭和42年(第五刷)、創文社、900円、近代という歴史的状況の根柢にあると思われる問題を通して、人間存在の根柢を掘り返し、実在の源泉を探り直すという意図で宗教を問題としている。仏教思想の深い理解を背景とした宗教の哲学的探求の書である。次の各章を含む。1.宗教とは何か、2.宗教における人格性と非人格性、3.虚無と空、4.空の立場、5.空と時、6.空と歴史。
 4)星野元豊著『宗教の本質』―宗教学と宗教哲学の問題―昭和42年、法蔵館、1,400円、宗教の哲学的研究と、経験科学的研究との両者を総合することによって宗教現象を理解しようと試みた概論である。
 5)吉野清人著『原始宗教』角川新書、昭和39年、250円、宗教研究に学説史の理解を欠いては、それは決して稔り多いものとはならない。このような信念に立って著者は初期の宗教学説から最近の社会人類学的研究の傾向に到るまで幅広く網羅している。諸学説の的確な把握は豊富な内容を新書版の限られたスペースによく盛込むことを可能にしている。学的水準も高いし、入門の読みものとしても面白い。
  同じ著者には『原始文化ノート』紀伊国屋新書、昭和42年、300円、という小論文集もある。
  6)『世界の宗教』12巻、昭和44年〜45年、淡交社、各巻750円、人類の歩みを宗教現象に焦点をおいて展望し、現代社会の理解に寄与しようという意図をもって企画された全集である。各巻ごとに異なった著者が分担している。夫々の著者は各巻の表題の専門家であるというよりも、むしろその領域を含みつつも更にそれを越えた広い領域で仕事をしている学者たちである。そういう点で各自の特徴を発揮して執筆した異色ある新しいタイプの入門書である。


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