図書館統計の
  国際基準設定
                           −そ の 3−

        
 −図書館統計の調査項目−

                   森 田 優 三

 勧告案の第三部にはユネスコが各国政府から報告を求める統計事項が詳細に列挙されている。これは一般読者には興味も少ないことであろうから項目名だけを紹介して若干のコメントを付記するに止めておこう。
  1.図書館の数(行政単位とサービスポイント)
  2.奉仕の対象人口。 これは国民のどの範囲まで図書館サービスが浸透しているかを知るための資料で、開発途上国では図書館活動による文化開発度測定の一つの手がかりとなる。公共図書館ではそのネットワークによって奉仕される地域住民の総数が対象となる。
  3.収蔵資料数。 書物、定期刊行物、および写本とそれらのマイクロ複写物に限られる。スライド、レコード、録音テープ等の視聴覚資料も最近は図書館資料として、特に先進国では重要度が増してきているが、これらは数量の計算方法が困難でまだ一般的によい方法が見出されていないので、専門家会議ではその重要性を確認した上で将来の研究課題に残し、差し当りは収蔵資料の統計の範囲内に加えないこととした。書物、定期刊行物等の計算単位についても、各国事情が異なり、単一の方法に統一することが困難であるために、冊数と占拠された棚の延長メートル数を並用することとし、マイクロ複写物についてはマイクロフィルムはその巻数、その他については明確な物理的単位で計算することになる。
  4.新収資料数。 書物、写本およびマイクロ複写物に限られ、書物、写本は書名冊数または登録単位数で計算される。最近1年間の数字が求められる。
  5.定期刊行物の受入数。 1年間の受入れタイトル教。
  6.登録利用者数。 原案では入館者数の報告も求められていたが、学校や公共図書館では事実上調査が不可能であること。調査しても意味がないということで削除きれた。登録利用者というのは資料を館外で利用するために図書館に登録して
いる人のことである。
  7帯出資料数および貸出しに代わる複写資料数。図書館の利用方法が複写技術の急速な進歩によって大きく変化しつつあるので、複写の方法による利用がどの程度に行なわれてきているかを知ることはきわめて重要であって、ここでいう複写資料とは書物一冊としての完全な複写提供である。
  8国内における図書館の相互利用。
  9国際間における図書館の相互利用。
 以上の2項目については特に複写サービスによる相互利用の発達の程度が重視される。
  10写真およびその他の方法による複写サービス量。 小口の複写サービスであって、枚数あるいはマイクロフィルムのコマ数で計算される。
  11通常経費。 この項目も図書館活動がどの程度活発に行なわれているかを推定する目やすになる。ただし内容は総額のほか人件費と資料購入費に限られ、経常費の中の建物の維持費等については各国の事情がそれぞれ違うので比較しても意味がないということで省かれている。
  12.資本的経費。 固定資産の獲得または増加(頭初蔵書および新増築のための備品費を含む)のための経費。総額、土地建物、その他に分ける。
  13.図書館員。
    a 館員総数(フルタイム・パートタイム)
    b 正規の司書資格を有する図書館専門職
    c 図書館内の長期勤務によって訓練を受けた図書館専門職
 図書館専門職の定義付けも国によって事情が異なるので困難である。上記の区別は現状において最も正確に近い図書館員の資質の国際比較が可能な方法として案出されたものである。
 以上がユネスコ勧告の要求する報告項目であって、勧告はこの報告が3年毎に定期に行なわれることを求めている。ユネスコへの報告はもちろん全国集計の数字のみであるが、このような数字をまとめあげるためには、開発途上国ではもちろん先進国でも多くは国内の図書館統計の組織を再整備する必要に迫られ、わが国もまたその例外ではない。
 なおこの勧告案は昨年のユネスコ第16回総会で11月13日付で正式に採択されたので、加盟国であるわが国は最初に述べたように速やかに必要な行政措置を進め、その結果についてユネスコに報告する義務を課せられているのである。              (経済学部教授)


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