No.6.1972.1.

 


理 学 部 分 室 の 開 館 に 当 っ て

図書館長  渡  辺  幸  生


 理学部と電算機のための九号館が今度新築落成して、すばらしくスマートな姿を現わした。前庭も広々として、おちついた雰囲気をもっている。この中に図書館の理学部分室が設けられた。これで大学院、薬学部、工学部の各分室についで四番目の分室が開館した訳である。教授・学生の皆さんの便利は一段と増大し、研究は大いに進むであろうと期待するものである。
 図書館は集中管理方式をとっているので、分室の職員は少ないが、図書館としての仕事は殆ど中央の図書館でやっている。分室を利用される皆さんは分室で至らないところは中央図書館にお出下さるようお願いする。殊に各分室にはそれぞれの専門分野の図書雑誌に限って排架してあるので、一・二年の学生諸君は中央図書館を利用されるほうが便利であると思う。図書および図書館に対する要望があったらどしどし投書函に投ぜられることをお願いする。
 私の感じることは理科系学問の進歩のめまぐるしいことである。医学書に限らず理科系の書物は出版されて五年を経過したら、内容が古くなってしまうと言われている。ことに戦後アメリカ医学の進歩はめざましい。医学に関する情報の交換と配布の組織が完備しつつある。図書館は図書雑誌の管理を中心業務としていた従来の考えから情報のセンターたる任務をいや応なく引受けなくてはならなくなっている。日本でも医学図書館のこの方面の研究と実務の発達は他の分野に比べて一段と進んでいるように思われる。
 このような理科方面の研究における現状に情報交換の必要に対して、文科系諸科学もまた同様な傾向が見られる。それは調査統計類の原資料的文献情報の交換配布に集中されている。日本では出版物の洪水が見られるが、原資料的文献情報の公刊ということは必ずしも豊富とは言えない。マイクロフィルムやマイクロフィッシュという原資料の厖大なる量を嵩ばらない形で公刊することが世界的に行なわれるようになった。それらの文献は主として歴史的価値を有するものが選ばれている。それは最新の情報ではなくして、歴史としての原資料である。そこに文科系の一つの特徴が見られる。図書館の文科系の図書蒐集の傾向は誰々の研究書やすぐれた学者の業績を集めることから、古今東西の原資料の集積に向けられるようになったと思う。このことは文科系の学問が、「誰々日く」という権威者の説の引用によって、研究を構成していたことから、確実な事実に対する資料に基づく研究に向っていることを示していると思う。
 当図書館でもこれらの原資料の蒐集に力を注いでいるが、これの実現のためには図書費の配分についての考え方を大きく転換することが必要である。原資料的文献は多くの学科に亙り、各学部に亙って利用できる性質を有しているから、図書館全体としての配慮によってこれを求めるべきものと思われる。これが今後私共の心すべきことのように思う。
 図書館長の選挙が行なわれて、私が再びその任につくことになった。図書館の任務の転換が望まれるときに当って、非力ではあるが、皆さんの御要望に少しでも応えたいと思う。
                                                (法学部教授)


図書館報 P.2 →