ニュージーランド図書館事情 山口政俊
 日光の降り注ぐ海辺の砂浜や公園の芝生の上に寝そべり、日光浴を兼ねてサングラスごしに本を読む。これがニュージーランド(NZ)の典型的な読書スタイルであろう。豊富な余暇を、のんびりと自然を楽しみながら本を読む。NZ人に読書家が多いのは当然の成り行きであろう。日本人の大部分が少ない余暇の中に読書の時間を見つけるのとは大きな差がある。NZは書物の大半を輸入しており、したがって本の値段が驚く程高い。また書店で売られている本の種類は少なく、日本の書店で新刊の本が売場一杯にあふれているのとは大違いである。この様な背景のためだろうか、NZに公共図書館が多く、各町や通りに少くとも一つは存在していた。これらの図書館が所蔵する本の数はかなり多いが、その割に閲覧室が狭い。これがNZの図書館の特徴である。借りた本を屋外で読むのが一般的なので広い閲覧室が必要ないからである。私の家族は週に一度、近所の図書館を利用した。図書館の一隅が社交の場として開放され、書物に関する情報交換の場に成っていた。そこでは子供達が互いの本を交換しあう場にも利用されていた。これも図書館の大きな役割の一つだと聞いた。近所に図書館の無い所では、移動図書館が活躍していた。日本に比べ、そのような場所の多いNZでは早くからそのシステムが発達しており、それを自慢にしていた。

郵便箱の中に希望する本名を書いておくと、次週にその本を届けてくれるシステムである。幼稚園や小学校にも巡回し、本を読んでくれるサービスもあり、子供達にはすごい人気である。
 私はオークランド大学に留学していたが、大学には中央図書館と各学部が所有する分館があった。中央図書館は本の内容ごとに分類され、例えば「日本」の所には「夏目漱石全集」から「かちかち山」まで約3000冊の書物が有った(残念なことには中国の本が多数混じっていたが…)。福岡大学の中央図書館に比べると広さや設備(コンピューター、視聴覚器材)などの点ではるかに劣っていた。しかし、その利用効率ははるかにオークランド大学の方が活発であるように思えた。NZの生活習慣として多過ぎる程のティータイムがある。それに伴い、図書室にも必ずtea roomが付設されている。ここは討論の場としても利用されており、コーヒー、紅茶はもちろんのことビールも販売されていた。ここで最も目を引いたのは壁に貼られたおびただしい数のポスターである。例えば、〔最近発刊の「〇〇××」という本についての意見交換〕というsectionを設け、それに関する意見のポスターが貼られていた。その前で、各ポスターの発言者が集まり、他の人を交えて意見交換が続けられていた。残念ながらその内容を全く理解できなかったが、エキサイトする場面も見かけた。一隅には自作の本コーナーがあった。もちろん製本されていない粗末な作りの本であるが、一部は5〜10ドルで売られていた。ここでは立ち読みコーナーが設けられており、極めて人気の高く、大学以外の一般の人々も多く見かけた。
 NZにわずか一年間滞在し、大学と近所の図書館にしか行ったことのない私の経験を基に、全てのNZの図書館を書きつくしたかのごとく書いた本文は、必ずしも正確にNZの図書館の事情を表しているとは言いがたい。しかし、NZの人が読書を自然の中で楽しみ、生活の一部にしており、また図書館を社交の場の一部としていることは確かである。オークランド大学図書館では福岡大学では見られない利用方法を独自に考え出し、図書館の活性化を図っていた。福岡大学でもこの様な利用の場を設けてはいかがであろうか。
(薬学部 助教授)


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