大学の図書館 水野博志
 われわれにとって図書館とは何であろうか。わたしはいくつかの図書館を思いうかべてみる。はじめは小学校の小さな図書室からはじまって、目黒高校の図書館、慶応大学の図書館(旧館、新館)、日比谷図書館、国会図書館、証券会館の図書館、西オーストラリア大学の図書館、メルボルン市の図書館、そして福大の図書館。こうしていくつかの図書館を並べてみると、個々の図書館の機能、文化的役割はかなり異なっているように思われる。小学生にとっては小学校の小さな図書室がふさわしい。そこには児童文学全集とか図鑑の類が並んでいた。高校の図書館では、教料書レベルをこえた科学書、歴史書やさまざまな文庫本、雑誌が小じんまりと並んでいた。市民図書館となると、技術的、文化的なもの、小説の類が多く目につく。他に建築的価値が重要である図書館がある。その代表が慶応大学旧館図書館である。受験雑誌の表紙によく出てくる重文の図書館、右側にある尖塔の中はどうなっているのかと思ったら、ただの小さな閲覧室にすぎなかった。又、メルボルン市の図書館はビクトリア朝時代の代表的建築の一つであるが、薄暗い広大な閲覧室にはほとんど人がいない。
 大学の図書館の役割は学習とか趣味とか建築的意義よりも研究にウエイトが置かれていると思われる。この点で福大の図書館はなかなかすばらしいと思う。これだけは利用してみた人でないとわからないが、まず第一に本がよく揃っている。研究用の雑誌はほぼ主要なものが揃っているので研究者にはありがたい。学生用のレファレンス室は開架式になっており、主要な基本文献はここで手に取って見ることができるようになっている。図書館は閉架式より開架式の方が便利であるに決ま

っているが、スペースの都合上それができないとすれば、基本的文献が開架式で閲覧できるかどうかが重要であると思われる。わたしの分野に関するかぎり福大図書館はまずまずのようである。
 次に光学式カード・リーダーの導入により図書の貸出、返却手続はきわめて簡単になっている。これは昔のように貸出票を書いていたときと較べると雲泥の差である。又、最近図書の検索システムも導入され、著者名、著書名だけでなく分野別、キーワード別に文献リストを作成することができるようになってきている。レファレンス室にはコピー機があり、1枚10円でコピーすることができる。1枚30円で係の人に頼む時代もあった。われわれにとって当り前のように見える福大図書館もここ十年で著しく進化してきたのである。
 将来も福大図書館はハード面で進化していくことが予想されるが、問題は大学全体としてこれを使いこなすことができるかどうかである。丁度コンピューターの計算能力がいくら高まってもソフトウェアがよくないと十分使いこなせないのと同じである。元来研究用にできている図書館であるから、それを十分生かすためにはそれに対応した研究教育システムが必要である。研究者にとってはここのシステムは恵まれているが、一般学生にとってはどうだろうか。わたしは3年生のゼミ生に、ゼミに入る前に図書館を利用したことがあるか尋ねたところ、半数以上の者が一度も利用していないことがたびたびあった。しかしこれはある意味では当然である。なぜなら、今までレポートとか論文を書いたことがなければ、調べものをしなくてもやっていけたからである。さいわい商学部では本年度より1年基礎演習という科目が開設されることになった。それによって、図書館が1年生のときから積極的に利用されるようになることを大いに期待したい。
(商学部 教授)

イラスト


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