No.83.1999.4


図書館は大学の心臓

森     茂  暁

 大学の研究における図書館の役割はこのうえもなく大きい。人間の器官にたとえるならば、さしずめ心臓に相当するでしょう。図書館に出入りする学生諸君や教職員は、さながら血液です。栄養を吸収して出てきます。また図書館には、その大学の性格があらわれます。私はこれまでに京都・山口の私立・国立の大学に奉職したことがありますが、図書館はそれぞれに大学の学風や学生の気質をよく反映しているように思えました。
 さて、福岡大学について言うと、福岡大学は文系と理糸の各学部をあわせもつ総合大学ですから、いろいろな分野の図書や雑誌が絶妙なバランスでもって、しかも大量に所蔵されています。貴重な書物が永い年月をかけて、意識的に収集されたのです。
 個人的なことを言いますと、私の研究領域は日本中世史です。今から6百年も7百年も前のことを文献史料によって調べます。史料は活字本によっても収集しますが、最後はやはり原本です。必要なときは、直接東京や京都などに出かけて、原本や写真版を閲覧しなければなりません。九州にいると、これが大変です。
 しかし幸いなことには、近年になって、写真技術が進歩し情報の公開が急速に進んだことによって、原本の写真版が広く行き渡るようになりました。福岡大学図書館には、日本中世史研究者がよだれを流してほしがるような原本の写真版が大量に架蔵されています。例えば、京都の「東寺百合文書」、奈良の「東大寺文書」、千葉県佐倉市にあ
る国立歴史民俗博物館の「広橋家旧蔵文書」(京都の公家日野家の中世日記を多く含む)などです。まもなく東京の宮内庁書陵部で所蔵する「九条家文書」(京都の摂関家九条家の文書)が整理・架蔵され、利用に供されます。
 こうなると福岡の地で、十分の中世史研究を行うことが可能となります。いまや、福岡大学は九州における中世史研究のセンターになった観もあります。むろんここにいたるまでに関係各位のご尽力があったことは申すまでもありません。
 これまで日本史関係の史料の話をしてきましたが、別に日本史にかぎらず、他の分野・専攻に関しても、貴重な文献・資料が所蔵されているはずです。このような貴重な文献・資料は、有効利用されてはじめてその価値を発揮するのです。皆さんは、図書館という宝の山にどのような宝があるか知悉していますか。さあ、まず図書館に行き、どのような文献・資料があるか調べてみましょう。きっとためになる発見が多くあるはずです。図書館とは常日頃からなじみぶかくしておきましょう。
 夜もすっかり暮れ帰宅しようとして、文糸センター棟の研究室から福大前のバス停に向かう時、図書館にまだ明かりが灯っているのに気付きます。このときなんだかうれしいような気持ちになるのは、私ひとりだけではないでしょう。それはおそらく、図書館という大学の心臓が元気に活動しているからではないでしょうか。
               (人文学部 教授)

図書館報 P.2 →