1(A). 安政三十二家絶句
(アンセイサンジュウニカゼック)
(刊)半紙本三巻三冊 額田正 [編]
安政四年(1857)二月刊
京都 菱屋友七郎ほか京都三肆・江戸二肆・大坂三肆
編者は、京都の書肆擁萬堂額田正三郎。(A)版の奥付にもその名が見える。本書は、三十六人の詩人の詩を集め、「三十六家」と題して出版しようとしたが、先に『天保三十六家絶句』(天保九年刊)という書名が存在していたため、書肆間の条約により、旧刻の書名が使えず、「三十二家」と名づけ、四家分を附録に載せた旨が、目録末に記されている。
このような詞華集は、先に文政・天保・嘉永と存在し、この後も文久・慶応・明治と続いていくが、それと同時に(B)版のように、明治に入ってからも後刷りされていたことがわかる。また、本書は、広瀬淡窓をはじめとして九州の漢詩人が数多く含まれているところに一つの特徴を見ることができる。

