二十丁・表(画像) 二十丁・表(テキスト) 二十丁・表
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七十二歳なるに、いまだ杖(つゑ)を携(たづさ)へず。 目も亦、霞(かすみ)がちなりしが、是をつかふにつけて明らけく、此一巻も自筆にて書終りぬ。 思へば拙き筆のみならず、暗き心の恥しく、よしなしごとの数々を、永く世に笑はれむことぞものぐるほしけれ。 もとより賤のを、しづのめの為に書残とは言ふものゝ、道理の違ひなんことのおぼつかなければ、予が謬(あやまり)を正(たゞ)してん。 識者(しきしや)をまつものならし。
                 筑州 薬院 推移軒彫梓