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農家訓
           北筑 法眼普山著
夫、農業は、上古神農氏(しんのうし)よりはじまりて、もろこし世々のすべらぎ、新玉 の年立帰る穀(こく)のあしたには、手づからみづから鋤(すき)をとり給へば、三公(さんこう) 九卿(きうけい)も共に手をおろしてすきかへし、穀の神を祭給ふとかや。其道 を伝へこし、其身はひきゝに在て泥(どろ)にまみれ、穢(けがれ)を触(ふるゝ)と言へども、その 徳は、雲のうへなる玉の階(きざはし)より、あまざかる橋の下に臥(ふ)す身に至 まで、あまねく及ぼさゞるはなし。されば百姓は四民(しみん)の中に在て、おの
づから四民を養(やしな)ふなれば、百姓のことをおゝんたからと訓(くん)じ、又国の元(もと) とも称(しやう)せるぞかし。その労(らう)せるや、国の為にして、その貢(みつぎ)の余(あまり)をもて