十三丁・裏(テキスト) 十三丁・裏(画像) 十三丁・裏
←十四丁・表へ 一覧 十三丁・表へ→

なる家あり。先祖へ不孝となるを、勘弁せざるゆへ成べし。
○法事に縁なき人をあつめ、酒をすゝめること、別して非礼(ひれゐ)なり。 田舎の僧は、亡霊(ぼうれゐ)の酒を好まれしかば、追善(ついぜん)に呑(のめ)やとて、袈裟(けさ)衣(ころも)を着(き)ながら、盃(さかづき)をかゝへ、 自(みづか)らすゝみ、人にもしゐて、飽(あく)まで酔たはるゝさま、見るさへも堪(た)へがたし。
  なにゆへにかくなる身ぞとおりふしは姿にはぢよ墨染の袖
これは、知識(ちしき)の歌なり。 かゝる末世の僧を、示(しめ)し給ふ詠なるべし。 法事に酒宴(しゆゑん)を儲(もふけ)るは、霊を慰(なぐさめ)るにはあらずして、あなどりて、霊を慰ものにするにやなりぬらん。 憚るべき事ならし。 作善、追福の意には、かなふべからず。