十七丁・表(画像) 十七丁・表(テキスト) 十七丁・表
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むかしより穀を大切にして、冥加(めうが)有し例(ためし)多し。
○諺(ことわざ)に、穀は一生の守本尊(まもりほぞん)と言ひ、穀菩薩(こくぼさつ)とも言へり。 此縁つきては、一日も存生(ながらふ)べからず。四民ともに、此菩薩を信仰せざること有べからず。 別して百姓は眷属(けんぞく)なれば、猶大事にすべし。
○世の宝とする物は、金銀珠玉(しゆぎよく)、また類なき品ありと云へども、命なくては何にかせん。 其命を続は、米なり。 しかれば米を宝の最上(さいじやう)とはすべし。 先年の荒歳(こうさい)に、珊瑚珠(さんごじゆ)を懐中(くわいちゆう)して餓死(うへじに)し、政宗(まさむね)の脇指(わきざし)をいだきて餓死したるもあり。 是等は、かの菩薩に無信心なる輩なるべし。
貧窮の百姓、子を多く育(そだて)ては養がたしとて産子を殺し捨(すてる)