十七丁・裏(テキスト) 十七丁・裏(画像) 十七丁・裏
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ものあり。 道理を知らねばとは言ひながら、あさましき事なり。 これ、人にして人にあらずと言ふべし。 鳥獣(とりけだもの)に劣(おとり)たるふるまひなり。 鳥獣は、一同(いちどふ)に子を数うむと言へども、一ツとして殺ことなく、求得(もとめゑ)たる餌(ゑ)を子に分(はか)ちあたへて、其身は痩(やせ)おとろへて育つ。 其育る時に常には恐れ、敵(てき)しがたきもの来るに、子の為には我が命をなげうちて向ひ凌(しの)ぐ。 親の子を慈愛(じあい)する所、人ならぬさへ天理の自然なるぞかし。 然に、人として一人の子を産むをさへ天理に背て、殺し、捨こと、天の咎(とがめ)おそるべし。 是大なる恥なることを知べし。 子を殺は、父母を殺すに次ぐとも沙汰せられたり。 我が子とても、我が子とのみ思ふべからず。 親先祖の血脈(けちみやく)を受て生れるゆへ、先