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なれば、大事にかけて怠(をこたり)あるべからず。 ○士の君(きみ)に忠を尽し、下民をあはれむの良臣(りやうしん)は稀(まれ)にして、下を剥(はぎ)て、上に媚(こび)るもあり。 君寵(くんちやう)の人に諂(へつら)ひ、或はにくみ、又は前に阿(おもいり)て、後にさかしらをかまへるもあり。 役義(やくぎ)に依て人をくるしめ、人を殺(ころす)も有り。 工のうへにも乗物師(のりものし)のごときは、人の官(くらい)にすゝむを悦び、棺(くわん)を製(つくる)ものゝ如く、人の死を待もあり。 鉄砲師(てつぽうし)は貫(つらぬ)かんとおもひ、具足師(ぐそくし)は破(やぶ)られじと謀(はか)るがごとく、其職によりての善悪(ぜんあく)もあり。 商人にも、肴屋は人の幸を好み、質屋(しちや)は人の貧を願ふがごときもあり。 又、職人は我が細工のもの能くて、其品久しく堪(こた)へて、人の重宝となれかしと思ひ、 |