五丁・表(画像) 五丁・表(テキスト) 五丁・表
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商人は売たる品、はやく損(そん)じ破(やぶ)れて、又もとめに来(こ)よかし、人は損せよ、我には利あれと思ふ。 それのみならず、鯨(くじら)の油を買入(かいいれ)ては、田に虫生ぜよかしと思ひ、穀物(こくもつ)を買込ては、田畠の能くみのるをにくむも有べし。 これ皆、我が一分を立んとする志願(しぐわん)にして、いと拙(つたな)し。 百姓は何の謀(はかりごと)もなく、田畠に力を用ひ、貢を大事にかけ、其余をもつて、相応(さうおう)に家をとゝのへ、雑穀を貯(たくは)へて、 非常(ひじやう)の備(そなへ)とすれば、たとひ天災(てんさい)にて荒年(かうねん)ありとも、餓(うゆる)こと有べからず。 つく/\市中の有様(ありさま)を見るに、一旦時にあひて栄(さかへる)も速(すみやか)なれども、衰(おとろへる)も急にして、予が七十年の間にさへ、 盛衰(せいすい)存亡(そんぼふ)、指(ゆび)を折(おる)にいとまなし。是、実と不実との禍福(くわふく)、天