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道ゆるされざる所おそるべし。
農家にはかゝること稀なり。農家にして、必商人の心を持べからず。
百姓は、人能かれ、我よかれ、世の中能かれと志す善行の業なれば、自(おのづか)ら天道に叶なるべし。
しかれば、農業を等閑(なをざり)に思ひて、其勤を疎(おろそか)にすべからず。
油断(ゆだん)すれば、其身の乏(とぼし)きのみならず、世の豊ならざる端ともなれば、精力(せいりよく)をつくすにいとまあるべからず。 百姓は鶉(うづら)衣の尻切(しりきれ)を着て、雑穀(ざこく)を食ひ、家とても、棟(むね)ひきく、削(けづ)らぬ柱(はしら)に、皮(かは)ながらの梁(はり)にて、 衣食住(いしよくぢう)共にむさく、其身は泥(どろ)にまみれ、糞(ふん)に穢(けが)れ、いとつたなく、余所目(よそめ)にさへうたてければ、其身には猶うるさからん。 しかしながら、持まへの身の程にして、其いやしきを |