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もて尊しとす。 驕ことなく、世の浮(う)き沈{しず(ママ)}をまぬがるべし。 うつくしきを好て何にかせん。河原者(かはらもの)の錦(にしき)を着、傾城(けいせい)の綾(あや)を着るを見るべし。 いかに美服(びふく)を餝(かざる)と言へども、其身の業のつたなければ、誰(たれ)かこれを羨(うらやむ)べき。 美好(びこう)は不祥(ふしよう)の器と沙汰せられしは、かゝることにやあたりぬらん。 百姓の衣食住に侘(わび)て、心寛(ゆたか)にして其業を楽しまんにはしかざるべし。 市中は餝を専として、無きを有が如し、少きを多きが如するに苦むぞかし。 扨こそ、其つぐのゐにさま/\謀(はかりごと)をなし、偽に偽をかさねて、信を失ふもの多し。 これは身の程を弁(わきま)へざれば也。 農家の粗衣(そゑ)、粗食、粗宅(たく)に馴て、餓寒(きかん)を凌(しの)ぐに足(た)り、軽薄(けいはく)をはなれて、心に煩(わづら)はしからざるぞ |