七丁・裏(テキスト) 七丁・裏(画像) 七丁・裏
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夏来れば賤があさぎぬときわけてかた田舎こそ心やすけれ
かくこそあらずとも、今めかしき衣服を用ひず、いやしく身を持に依て、其徳大に高しと言ふ所を合点(がてん)して、うらやむべからず。 河原者の芸の其役に依ては、錦繍(きんしゅう)を着かさね、傾城の綾羅を身にまとふと言へども、四民をはなれて 遊民にても極々下段にして穢多(ゑた)に隣(とな)れる業なるを見るべし。
○市中は衣服ばかりにあらず、店(みせ)の餝に至るまで美々(びゞ)しくするから商があるゆへ、無きを有がごとく、少きを多がごとくするも、 其謀の端(はし)にして、其徒(と)の栄(ゑい)とはするものならし。