九丁・表(画像) 九丁・表(テキスト) 九丁・表
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心あらん農家、かならず町家と縁(ゑん)を組ことなかれ。 槿花(きんくわ)の栄なる全盛(ぜんせい)におだてられて、見ること聞こと結構(けつこう)づくしに、代々伝(つた)はる道具(どうぐ)が魁(さきがけ)、 それから田が消(き)へ、畠が失せ、家屋敷まで人の宝となりゆくこと、おそるべし/\。 牛は牛づれ馬は馬づれとて、百姓は百姓と縁を結(むす)び、持まへの農業を励(はげみ)て、子孫永久の謀をなさんには、居宅(いたく)も唯あからさまなるぞ能きものならし。
○百姓の家に生れて、百姓をいやしきものゝように心得違ひ、美服(びふく)を着かざり、美食に飽(あ)き、大なる家に住て常にいとまあらんことを願ひ、 今までの業をうとみ、他の業に堕落(だらく)せんこと、大なる不忠不孝の罪なるべし。衣食住のことは前にしるせり。扨、人にはいとま有