中・九行(画像) 中・九行(テキスト) 中・九行
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□にて是なりとも御国中の来年の種に差上度しと、祈(いのり)しかば、不思議(ふしぎ)なる□(か)な正助が田に限(かぎ)り、 皆枯(か)れ臥(ふし)たる中に茂(しげ)りみのりたりしとかや。さればこそ、その頃、無貢(むこう)の田地をたまはりたりしぞありがたき。これを持つたへし其子源内もさるものにして、 我は不徳なるに、かゝる御恵を其侭(まゝ)にせんは、冥加(めうが)おそろしく、憚(はゞかり)ありとて、幾度(いくたび)も願出て御返し奉りしが、其源内が孫なる今の源助に至て、 前(さき)の 国君(とのさま)、正助が徳を追ひ、感(かん)じ給ひ、已前の田地の欠(かげ)たるを補(おぎな)ひ、前の   田地に復(ふく)し、貢なしにして下し給ひ、 その上に祭田(さいでん)として加増をなし給りぬ。又、正助が墓(はか)を結構(けつこう)に修復(しゆふく)し下し給ひけるが、 父母の墓よりよろしくては霊(れゐ)の意(こゝろ)に叶べからずとて、父母の墓をも改め建(たて)て給りしぞかし。しかるに今年、