読書について思うこと

薬学部図書委員 大川 雅史

 最近の大学生の約二人に一人は本(電子書籍を含む)を全く読まないらしい。確かに自身の学生時分も似たようなものだったが、歳を経るごとに割と読むほうになった。

 最近読んだ『植物一日一題』(牧野富太郎 著)の“イチョウの精虫”の項の文章中に「聳立する」と出てくる。さて何と読むのだろうか。「聳」という字は、送り仮名をふると「聳える(そびえる)」である。意味は何となくわかりそうだが、何と読むのだろうか漢和辞典で調べてみる。‘彳’、‘耳’を手掛かりにするか。総画で調べるか。ちなみに‘耳(みみ、みみへん)’なのだが、「聳立(竦立)する」とは、「しょうりつする」と読み、一際高くそびえる様をいう。すると同義語「聳峙・竦峙(しょうじ)」も目に止まるし、前後には「聳勧(すすめはげますの意)」などの熟語が並ぶ。役立つかはわからないが少しは知識が増える。

 一方、ネットならすぐに答えを見つけられるだろう。ピンポイントで読みも意味もわかるだろう。更に今はAIの発展も目覚ましいものがある。書くことについても格段に効率が上がる。レポートを書くのもAIに任せれば、一応の形にはなる。しかし、最終的な仕上げは人間がやらねばならない。だから自身の文章力も大きく影響するのではないだろうか。

 本を読むことは、余計な情報も入ってくる。実はそういったところに思わぬものが転がっていたりするものだ。また、余計なものやいらないものは捨てれば良いだけで、裾野に広がりがあればいろんなことを知る機会にもなる。文章力についても読書は良い訓練になると思う。他人の文章の書き様を真似ぶ/学ぶと文章の上達に繋がると思う。更に、本を読むことは、教養を身につける一手段だと個人的には考えている。今日日の人達は一冊で数段レベルアップしなければ、タイパ・コスパが悪いと思うかもしれない。けれど読み重ねていけば、一つ二つは琴線に触れることもあると思う。そんなふうに一つ一つを重ねて成長につなげていくというのも読書の醍醐味ではなかろうか。

植物一日一題 / 牧野富太郎著

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