28.魚貝譜【ぎょかいふ】(外)
本書は初め『龍【たつ】の宮津子【みやつこ】』の題で、江戸座の絵俳書として刊行されており、
各画面とも見開き一丁に大きく魚貝の姿を写し、その周囲に二句から多い所で六句ほどの発句とその作者名が彫り入れられていたのを、
享和二年に『魚貝譜』と改題し、句の作者名のみを削除して再印した。更にその後『魚貝略画式』と再度改題した時は、句も全部削って
絵のみとしたが、これは明らかに略画式モノの流行に乗った本屋のさかしらであったろう。
初版の『龍【たつ】の宮津子【みやつこ】』は極めて稀品。本書『魚貝譜』も伝書稀少。だが、
この二種は魚腹には雲母刷りを多用したりして、見事な仕上りとなる。それに比べると『魚貝略画式』は見る蔭もない粗品となる。