9.[はなし](柱)
黄表紙仕立の絵入咄本。柱刻は「はなし 栄 四」からはじまり、末尾の二丁分(「九」「十」)は、
柱刻が異なり「八」丁まで「栄」とのみ記された(計七丁)中央に、板元と見られる「栄邑堂」の名がみえる。
二種の版本を取り合わせて新版めかした本。表紙等に題名記載がないため柱刻の「はなし」と仮題を記したが本題は「××はなし」
という略記かもしれぬ。
十丁裏巻末に「北尾重政門人三治郎十五歳画」とあり、恵斎が十五歳の折に描いたことがわかる。
これと同じ巻末署名を持つ黄表紙仕立の絵入咄本『小鍋立【こなべたて】』(安永七年(1778)刊)が最初の仕事として存在することが
報告されていることから(漆山又四郎「北尾政美と其の作品」『書物展望』八の一所収)、この本も『小鍋立』と同期の初作の一つとみられる。