23.繪本咲分勇者【えほんさきわけゆうじゃ】(外)
22.『絵本大江山』と同表紙、 体裁、刊記を持つため、同期に刊行されたと考えられるカッパ刷り物語絵本。 初版の時期は不明。上巻、鞍馬山の天狗を相手に修行する「沙那王」(牛若丸)からはじまり、 下巻、熊谷次郎直実が扇を挙げて敦盛へ向かうまで、見開き一丁につき一話ずつ源平合戦が展開する。 「千差堂 川関文思」の序に「文は朽ざるを以【もって】身を治【おさめ】、武は戈【ほこ】を 止【とどむる】を以国を治る故文武兼備る時には良将仰備【あおがれそなはら】ざる 時血気勇【ときはけっきのゆう】となる。其二道を魁て南枝に【ひらく】冬の梅、手折ば童子の 家土産に白きは源氏赤【あかき】は平氏の戦【たたかい】をいま目の前に書うつし、則【すなはち】 其名を源平咲分勇者と題し初春弄【はつはるのもてあそび】とはなしぬ」とあり、この本の主題紹介 (源平の合戦)と「童子の家土産」すなわち子供むけの絵本として作成されたことを物語る。 江戸期、22.『絵本大江山』と同様、鎌倉期武勇伝を主題とした児童向けの種々の絵本が流布していたことがわかる。