14.[日本名所の繪【にほんめいしょのえ】](外)
右上から北海道、手前に弓形になった本州、そして四国、九州を描き、壱岐、対馬の先には、
「朝鮮」が蜃気楼のように海上に浮かぶ。海上にはうっすらと三日月が浮かび、南は屋久島、種子島から北は「蝦夷」
江刺方面までを一覧できる。主要な地名は枠付で記し、場所によっては17.[江戸一覧図]と同様、片仮名まじりで山名
や地名が書き込まれる。また17.と同様、右上隅に同形態の落款「江戸恵斎紹真筆「紹真」(朱陽刻方印)」があるため、
17.[江戸一覧図]が評判となった後すぐに制作された可能性もある。
また、興味深いことに、北斎が景観を俯瞰した同様の構図が「東海道名所一覧」(大々判、文政元年(1818))、
「唐土名所之絵」(大々判、天保十一年(1840))他、計五種の現存が報告されている。これら名所一覧図も恵斎の後に、
北斎が巧みに真似て、北斎自身のお家芸としたと喜多村信節は記す(『武江年表補正略』)。
翻って本画には発売された折の袋が存在することが報告されており
(名雲書店目録『ニュースボード』第四四号)、
(袋表面)「日本名所の繪」、
(袋裏面)「江戸通油町
仙鶴堂 鶴屋喜右衛門
製本所 同芝明神前
甘泉堂 和泉屋市兵衛
同浅草茅町二丁目
青藜閣 須原屋伊八 」
とあるため、「日本名所の繪」として、江戸の書肆で刊行・発売されたとわかる。