本と出会っていますか?

商学部図書委員 杉本 宏幸

 

 スマートフォン、パソコン、タブレットなどでインターネットに接続すると、膨大な情報に到達できる時代になりました。流れてくる膨大な情報の全てを処理することは人間にはできませんから、私たちは無意識のうちに自分が取得すべきものを選んでいるといえるでしょう。

 私が学生だった1990年代は新聞、雑誌、書籍などが貴重な情報源でした。しかし、いまや情報を得る選択肢が多いわけですから、敢えて本や雑誌を選ぶことは少なくなっているといえるでしょう。実際、書店数(書籍・文房具小売業)は25,673(1997年)から4,936(2021年)へ、その年間商品販売額は2兆4787億4100万円(1997年)から1兆123億8800万円(2021年)へ減少しており(令和3年経済センサス(活動調査))、本や雑誌が選ばれにくくなっていることはデータからも確認できます。

 こうした背景で、私は商学部のゼミナール(マーケティング)でゼミ生達と一緒に、2011年から紀伊國屋書店福岡本店さまの売り場をお借りし、「福大生が大学で出会った本BEST20」という企画に取り組みました。大学生が読んだ本を多くの人に知ってもらい、手にとってもらいたいという試みでした。大学生が大人に本を勧めるという試みです。この取り組みは、紀伊國屋書店さま、丸善さま、金文堂書店さまで数年間継続し、一定の成果をおさめました。

 他方、この企画を始めたゼミ生達は、私が知らないところでこの試みの成果を横展開しようとしました。せっかく選んだ本、せっかく創った売り場をもっと誰かと共有したいと考えたようです。それを当時の福岡大学中央図書館に売り込み、図書館内で本を展示させてもらいました。

 このとき福岡大学中央図書館で展示した本はほとんど借りられたとお聞きしています。本の場所を変えて展示すると借りられる(読まれる)ようになるのは不思議な感じがしますが、私たちは自分が見るべき、自分が読むべきコンテンツ(本や雑誌)に出会えていないのかもしれません。当時のゼミ生達の思い、それを支えてくれた図書館職員の方々の思いがどなたかに届いたのだろうと思います。

 現在、中央図書館ではブースを設置して本をお勧めすることがごく普通に見られます。書籍小売店による店頭マーケティングの手法はいつの間にか中央図書館に定着しています。私は「本が読まれなくなっている」と上述しましたが、それは本との出会いがどれだけあるかに依存するのかもしれません。本や雑誌が売れなくなった、読まれなくなったことは強調されやすいですし、それはおそらく事実でしょう。しかし、かつてのゼミ生達がしてくれたように誰かに読んでほしい本は、それは紙媒体であろうと、電子媒体であろうと他のどなたかに届くのかもしれません。

 皆さんは、今まで読んだ中で心に残っている本、誰かに読んでほしいと思えるような本があるでしょうか。図書館に来て本を探してみると、そんな本に出会えるかもしれません。

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