第2回貴重書オンライン展示 ー植物学の萌芽ー

植物学の萌芽

 江戸時代初期に、中国明代の本草書『本草綱目』が徳川家康に献上されました。本草学は、薬用としての利用に重きを置いて、植物を中心に動物、鉱物といった自然物を研究する学問です。江戸時代は泰平の世が続き、健康や医療への関心が高まったことから、本草学が全盛を極めました。

本草学研究

 江戸時代の本草学研究は『本草綱目』に載っている中国の植物を、日本にある植物にあてはめる試みから始まりました。江戸中期には、貝原益軒が『大和本草』を著します。『大和本草』では、『本草綱目』に載っていない日本の植物や、各地を歩いて集めた独自の観察、調査結果が記述されました。
 本草学研究は文献研究から、実地調査や観察による実証研究へと歩みを進めます。

大和本草 : 新校正 / 貝原篤信編録
草木性譜 / 清原重巨撰
有毒草木圖説 / 清原重巨
質問本草 / 中山呉繼志子善輯

異邦からの眼差し

 オランダ商館付き医師として来日したケンペルとツュンベルクは日本で採集した植物資料にもとづいて図譜を作成し、日本の植物を記述しました。ケンペルは元禄3年(1690年) 、ツュンベルクは安永4年(1775年)に来日しています。
 ツュンベルクは帰国後に出版した『フロラ・ヤポニカ』(Flora Japonica 日本植物誌)で、日本の植物をリンネ植物体系によって分類・命名しました。
 文政6年(1823)にはシーボルトが同じく医師としてオランダ商館に赴任し、ケンペルとツュンベルクの研究を発展させた『フロラ・ヤポニカ』を著しました。シーボルトは本草学者の伊藤圭介に、ツュンベルクの『フロラ・ヤポニカ』を贈っています。

The history of Japan
Flora Japonica

本草学から植物学へ

 江戸時代後期には、日本で初めてリンネ式の分類法を紹介した『泰西本草名疏』や、日本で最初の体系的西洋植物学書である『植學啓原』が出版されました。
 明治時代になると、本草学者の伊藤圭介や弟子の田中芳男、小野職愨らが博覧会や博物館に関する職務の一環として植物学に携わり、洋書の翻訳による近代植物学の入門書の作成や、博物図(掛図)の作成などを行いました。明治10年には東京大学理学部植物学教室が誕生し、植物学の本格的な研究が始まることになります。 

理學入門植學啓原 / 宇田川榕菴著
拾品考 / 野田青葭著 ; 石崎融思[画]
日本産物志前編 / 伊藤圭介著
有用植物圖説 / 田中芳男, 小野職愨撰 ; 曲直瀬愛, 小森頼信校 ; 服部雪斎圖畫
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