旅人の心得帳

旅の心得帳

文化7(1810)年に出版された『旅行用心集』(八隅蘆菴著)をもとに、おすすめの旅装束や旅をするときに気をつけるべきことを解説します。

旅の持ち物

『旅行用心集』には「長たびの道具ハとかく少きをよしと定めよおほきのハうき」という旅行教訓歌が載っています。
所持品が多いと、忘れたり持ち運ぶのが大変だったりとわずらわしい思いをしがち。必要なものをしっかり見極めよう!

旅装束早わかり

旅装束早わかりイメージ

持ち物チェックリスト

貴重品類
  
旅にかかる費用は、胴巻に入れて腹に巻いておくと安心。
1日分だけ早道に小出しにして使おう。小出しにするときは人目につかないように。
日用品・衛生用品
         
名所・旧跡やすばらしい風景、珍しい物を見たり聞いたりしたら、何月何日どこで何を見たと、ありのままに書いておく。
詩歌や絵も、思いつくまま見たままを残しておき、帰ってから清書するとよい。
     
宿屋で借りて使ってもよい。
普段使っている薬を携行するとよい。熊胆、奇応丸、返魂丹、五苓散、胡椒、延齢丹、蘇香円、梅花膏などがオススメ。
照明具
   
宿の行燈は消えやすいので、いざというときのために持ち歩くと安心。

旅の秘訣

「不自由は当たり前」が合言葉
風雨に遭ったり、食事が気に入らなかったり、宿で粗末な扱いを受けたり、旅には苦労や苦労がつきもの。旅の間は自分の思うままにしようせず、不自由を当たり前と思ってこそ旅を楽しめると心得よう。
宿へ着いたら方角、雪隠、出入口を必ずチェック
宿についたらまず、東西南北を確認して、便所や表・裏の出入り口を覚える習慣をつけよう。火事やけんかといった有事への備えを忘れてはいけない。宿で蚤を避けるには、苦参という草を生のまま敷物に入れておくのがよい。野山に多く生えるので、道中で見かけたら手折っておこう。
夏の暑さに注意
暑いと胃腸の調子が悪くなるので、食べなれない物を多く食べないこと。喉が渇いて水を飲むときは、よく澄んで流れている水を選ぶことも忘れずに。暑さで疲れても、道端や草むらで休息を取るのは厳禁!夏の野原には毒虫が多い。万一刺されてしまったら、延齢丹か蘇香円を塗ると痛みが引く。
山中ではけものの類に用心しよう
山道をひとりで歩くときは、熊や狼などを避けるために、先を割った竹杖で地面を叩くなど、音を立てて歩くように心がけよう。五岳と白澤の絵符を懐に入れておけば、鬼や猛獣が近づけないのでおススメ。狐や狸のしわざでふと迷ったり、急に暗くなったりなど奇怪なことが起きたら、落ち着いて来た道を思い出そう。
旅先では急がば回れを徹底
急いでいても知らない川を渡ったり、近道を通ったりは決してしないように。大水の出た川は、特に注意。小さな川であっても不用意に渡るのは絶対にやめよう。出水のときは急に増水して水の勢いが強くなり、川幅も広くなる。近道として船を利用するなら、天候不順等で「後悔先に立たず」となる場合があることも考慮に入れよう。
旅の連れは5、6人くらいまで
人はそれぞれ考えが違うので、大勢で長く旅をすると、うまくいかない者が出てくる。旅の連れは多くても5、6人程度にしよう。人足や馬の賃金、宿屋の支払いなどは、都度それぞれが出すこと。小銭がない場合は、その場だけ出してもらい、当日の宿で清算する。長旅になると、貸し借りがわからなくなりがちなので、おろそかにしないこと。
旅先では控えめに過ごしてトラブル回避
よその土地の風俗や言葉は、変だと思いがちだが、相手もこちらをそう思っているもの。他人の様子を笑ったりするのは間違いであり、口論のもとになる。人だかりができているところは、何か物騒なことが起きていると思い、立ち寄らずに素通りしよう。旅先で知り合った相手と食べ物や薬をやり取りするのも控えること。
旅の初めは足を大切に
旅の始めはりきってがむしゃらに歩いてしまいがちだが、足を痛めると旅の間中苦しむことになってしまうので注意。静かに足を踏みしめて、草鞋が馴染んでいるかを確かめながら歩き、適度に休憩を入れるようにしよう。足の疲れには、足の三里、承山、通谷の三か所に灸をすえるのがオススメ。
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