1892年/ハマースミス刊/Flower(2)/8折判(200×140mm)/ゴールデン活字/ボーダー9a・4番/紙刷り(300部):2ギニー [ヴェラム刷り(10部):10ギニー]
Morris, William -- News from nowhere : Or, An Epoch of Rest, Being Some Chapters from a Utopian
Romance. 305 pp. Hammersmith : Kelmscott Press, 1892 [publ. 1893]
所蔵情報
↓クリック(詳細画像/約270KB)
ある朝目覚めるとそこは60年後のロンドン。既に革命は果たされ、テムズ川は澄みわたり、貨幣は使用されておらず、人々は「喜びとしての労働」に従事している。時は未来に設定されているが、モリスが憧憬してやまない中世世界をモデルにした理想の社会と生き生きと活気に満ちた人々の姿が描き出されている。不朽のユートピア・ファンタジーである。
わが国では1904年に堺利彦が『理想郷』の邦題で初訳を出して以来今日までほぼ百年、幾種類もの訳があり、モリス作品中最も広くその名を知られ、また読まれた作品といっていいのではないだろうか。作品初出は『コモンウィール』誌1890年1月11日号から10月4日号に連載。単行本としては、1890年ボストンのロバーツ・ブラザーズ社から出版された。ケルムスコット・プレス版は最初のイギリス版リーヴズ・アンド・ターナー社版を底本としているが、若干の訂正が施されている。ギアが描き、例によってフーパーが彫ったケルムスコット・マナー(テムズ河を溯行する船旅を楽しむ登場人物たちの最終目的地)の木版の口絵はよく知られている。本文の印刷は前作 The Poems of William Shakespeare (No.11『シェイクスピア詩集』)(1893年2月発売)よりも先に完了していたが、発売は『シェイクスピア物語』より後になってしまった。口絵木版画の完成が遅れ、その印刷に3月初めまでかかった為である。W.モリス著/松村達雄訳『ユートピ便り』(岩波文庫,1968)の邦訳がある。尚、晶文社刊行「モリス・コレクション」中の川端訳
『ユートピ便り』は2003年春発光予定(昌文社編集部)とのこと。(前田雅晴)