W・モリスのケルムスコット・プレス


38.エリス編 『サミュエル・テイラー・コウルリッジ詩選』

1896年/ハマスミス刊/Flower(2)8折判(200×140mm)ゴールデン活字ボーダー13a・13番紙刷り(300部):1ギニー [ヴェラム刷り(8部):5ギニー]
Ellis, Frederick Startridge (ed.) -- Poems Chosen out of the Works of Samuel Taylor Coleridge. ii, 100 pp. Hammersmith : Kelmscott Press, 1896.
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『サミュエル・テイラー・コウルリッジ詩選』
桂冠詩人であったテニソンの『モード』(No.17)、ロセッティ、キーツ、シェリー、ヘリックと、ケルムスコット・プレスが出版した一連の詩集本の最後を飾るものである。コウルリッジとキーツについてどう思うかとの編集者エリスの手紙での質問に答えてモリスは「キーツは偉大な詩人で選集という形では出したくない。それに対してコウルリッジは支離滅裂な形而上学者で、本物の詩はほんの一握り。本物の詩と戯言の間の格差が大きいので、選集用にどれを選べばよいかの見分けはすぐにつく。興味深いと思ったのは次の詩だけだ」と言っている。そうして挙げているのが、『老水夫の唄』、『クリスタベル』、『クブラ・カーン』、『愛』という詩の4篇。これで60頁程のこじんまりした本になるでしょうと言っているが結果的には、ケルムスコット・プレスの刊本に選ばれたのはその3倍強の13編。60頁には収まりきれずに100頁を少し越えてしまった。1896年4月の発売である。「老水夫の唄」、「クリスタベル」、「クブラ・カーン」の3篇は斎藤勇、大和資雄訳『コウルリッジ詩集』(岩波文庫,1955)に、「愛」は『世界名詩集大成(9) イギリス』(平凡社,1959)の「シビルの詩片」抄訳中に邦訳がある。(前田雅晴)