W・モリスのケルムスコット・プレス


49.シドニー・コッカレル編 『十五世紀ドイツ木版画集』

1897年[1898年発行]/ハマスミス刊/Perch大型4折判(290×212mm)ゴールデン活字紙刷り(225部):30シリング [ヴェラム刷り(8部):5ギニー]
Cockerell, Sydney C. (ed.) -- Some German Woodcuts of the Fifteenth Century. xi, 36 pp. Hammersmith : Kelmscott Press, 1897.[publ. 1898] 所蔵情報へ所蔵情報

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『十五世紀ドイツ木版画集』 モリスが主に自分の15世紀刊本のコレクションから選んでいた35点の木版画をウォ-カ-社の写真凸版で複製したもの。モリスは「15世紀初頭から中葉にかけて…書物は単純な機械によって製造され、木版によって装飾された」とか、「木版画によって本を装飾するというこの技法は事実上ドイツ起源のものだ」と考え、その時代の木版画から肉太で簡潔な輪郭線と最少限の影付けで効果を上げる力強い線の手本を得ていた。
 モリスが1892年の講演「ゴシック本の木版画」(“The Woodcuts of Gothic Books”)で、直裁かつ詩的表現で並ぶものなしと称賛した『人類救済の鑑』(Speculum humanae salvationis)に掲載された木版画を通して、我々はモリスがケルムスコット版で目指した挿絵のあるべき姿を見ることができよう。
 13頁(画像に揚げた頁)1行目のラテン語と2行目の初期新高ドイツ語とは同一内容で、「旧約の律法が納められた聖櫃は童貞マリアのことを予め告げていた。出エジプト記:第25章」(和田達宜訳)と書かれており、中段の3行はドイツ語のみで「このことは、事実、エジプトの王ファラオとその臣民の眼前で明らかなしるしとされた。すなわち、神は彼等を赤い海[紅海]の中で包囲し、そこに沈められた」(和田達宜訳)とある。下段では、図18がアウクスブルクの聖ウルリッヒ(Ulric)及び聖アフラ(Afra)修道院でグンタ-・ツァイナ-(Gunther Zainer)の活字を用いて1471年頃に印刷された『人類救済の鑑』からのものであること、図19がアウクスブルクのアントニ-・ゾルク(Anthony Sorg)が1476年頃に印刷した同書別版からのものであることを説明している。(藤井哲)