W・モリスのケルムスコット・プレス


4.ジョン・ラスキン 『ゴシックの本質』

1892年 ハマスミス刊 Flower(1)小型4折判(200×140mm) ゴールデン活字 ボーダー1番 紙刷り(500部):30シリング
Ruskin, John -- The Nature of Gothic. iv, 127 pp. Hammersmith : Kelmscott Press, 1892.
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『ゴシックの本質』
   
ラスキン (1819-1900) の代表作『ヴェネツィアの石』(The Stones of Venice, 1853)の1886年版を底本とし、その第2巻第6章をモリスによる「序文」付きで復刻したもの。モリスによればこの章は、ゴシック時代の大聖堂の背後にある芸術的、社会的、経済的価値の再生を唱えていて、「その著作全体の核心部分」にあたる由である。彼は本書から「芸術は労働における人間の喜びの表現である」との発想を得ていた。またゴシック建築に携わった職人において技と信仰心とが一体化していた中世へのモリスの志向も、職人の技術を破壊して職人を奴隷化する蒸気機関に対する彼の嫌悪も、ともにラスキンの影響によるものであった(No.18参照)。
   この写真の左頁に見られるプリンタ-ズ・マ-クは、モリスがデザインした3点のうちの最初のもの。右頁ではラスキンが第2巻第6章の目的を「私はこの章に於て諸君に、本来斯く称せられたゴシック式建築の真の性質について、広汎であると同時に確実な観念を与へることに努めよう」(賀川豊彦訳)と述べた第1節のほぼ全文。(藤井 哲)
使用翻訳書:ジョン・ラスキン著、賀川豊彦訳『ヴェネツィアの石』春秋社 1931-1932