W・モリスのケルムスコット・プレス


34.ウィリアム・モリス 『イアソンの生と死』

1895年/ハマスミス刊/Perch大型4折判(290×212mm)トロイ活字/ボーダー14a・14番紙刷り(200部):5ギニー [ヴェラム刷り(6部):20ギニー]
Morris, William -- The Life and Death of Jason, a Poem. 353 pp. Hammersmith : Kelmscott Press, 1895. 所蔵情報へ所蔵情報

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『イアソンの生と死』紀元前13世紀にイアソン(Jason)が、アルゴ号(Argo)に50名の英雄と乗り組んで、金の羊毛(Golden Fleece)を求めて黒海沿いのコルキス(Colchis)に到達し、首尾よく金の羊毛とメデア(Medea)を故郷のイオルコス(Iolchos)に連れ帰るが、彼の浮気が発端となってメデアから復讐され、程なくして一生を終えるという伝説に取材した長編物語詩である。
当初は『地上楽園』(No.41)の一部として執筆されたが、規模が膨らんだために独立した作品として1867年に初版が刊行された。その後モリスは1868年と1882年に筆を加えたが、1895年のケルムスコット版でも改訂を施していた。しかし次女メイ(May Morris,1862-1938)が編集した24巻の作品集(Collected Works of William Morris, 1910)は1882年版の本文を収録している。
左頁のバ-ン=ジョ-ンズによる挿絵に金の羊毛が描かれているから、女性はメデアであろう。右頁では、重厚な縁飾りと、それとバランスを保つべく15行大の装飾頭文字が本文に配されている。発行後のインタビュ-でモリスが認めたところでは、本書は売れ残りを出したらしい。挿絵2枚の本が紙刷り本で5ギニ-(13万円弱)あるいはヴェラム刷り本で20ギニ-(50万円強)という価格設定に、読者が割高感を抱いたのであろうか。一方バ-ン=ジョ-ンズは、挿絵2枚に対して40ポンド(96万円相当)の報酬を得ている。(藤井哲)