W・モリスのケルムスコット・プレス


53.ウィリアム・モリス 『ケルムスコット・プレス設立趣意書』

1898年/ハマスミス刊/Flower(2)8折判(200×140mm)ゴールデン活字(本文)・トロイ活字チョーサー活字ボーダー4a ・4番紙刷り(525部):10シリング [ヴェラム刷り(12部):2ギニー]
Morris, William -- A Note by William Morris on His Aims in Founding the Kelmscott Press. 70 pp. Hammersmith : Kelmscott Press, 1898. 所蔵情報へ 所蔵情報

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 ケルムスコット・プレス最後の刊本。モリスの「設立趣意書」にコッカレルの「ケルムスコット・プレス史」と「ケルムスコット・プレス刊本リスト解説付き」が付けられている。口絵に使用されたバーン=ジョーンズの絵は、1860年代計画のみに終わった『地上楽園』特装版用のもので、再び日の目を見るにあたってカターソン・スミスの手が加えられ完成された。1871年、同じく計画はされたが実現しなかった『恋だにあらば』特装版用にデザインされた装飾3点も掲載されている。「私が本の印刷を始めたのは、美しいといえる資格をはっきり持ち、同時に読みやすくて、目をくらませることもなく、また風変わりな字形で読者の頭を混乱させたりしないものを作りたいと望んでのことである。」冒頭でモリスは自らの本作りの目的をそう言っている。本当に美しいものには人は喜びを感じ、感動する。本当に美しいものを創造すること、真の美を追求すること――これは何も本作りに限ったことではなくて、モリスが手を染めた恐らくすべてのことに当てはまることであった。彼の思想、否、存在の核になるものであったといってよいかもしれない。奥付の日付では1898年3月4日、ケルムスコット・プレスはこの「設立趣意書」の印刷を最後にその役目を終え8年間のユニークな活動に幕を引いた。W・モリス著/W・S・ピータースン編/川端康雄訳『理想の書物』(晶文社,1992)中にこの「設立趣意書」の邦訳が併載されている。(前田雅晴)